お茶の力で世界を笑顔に~伊藤園

経済部 三宅直

 爽やかなスカイブルーを背景に、おなじみの緑茶飲料のペットボトル。グラスに注がれたお茶が涼しげだ。

 「未来から求められる現代のお茶屋の仕事って、なんだろう。」

  • 6月23日朝刊の全面広告
    6月23日朝刊の全面広告

 伊藤園が2017年6月23日の読売新聞朝刊に掲載した全面広告は、そんなメッセージを投げかけている。「お客様においしいお茶を飲んでほしい。そんな『お茶屋』としての熱い思いを伝えたかった」。伊藤園経営企画部長の羽鳥雅春さん(43)は広告の狙いを語る。

清涼飲料市場に「日本茶」ジャンル

  • 広告を担当した羽鳥さんとお茶の普及を担当する菊地さん(左)
    広告を担当した羽鳥さんとお茶の普及を担当する菊地さん(左)

  長らくお茶は急須で入れて飲むものだった。それが自動販売機やスーパー、コンビニエンスストアが増え、今では急須だけでなく、ペットボトル入りのお茶を飲むことが当たり前の時代になった。こうした時代の変化を先導してきたのが伊藤園だ。1985年に缶入りの緑茶、1990年にはペットボトル入り緑茶「お~いお茶」を世界で初めて発売。かつて炭酸飲料が中心だった清涼飲料市場に「日本茶」というジャンルを新たに作り出した、との自負がある。しかし、そこで立ち止まるつもりはない。

独自の「ティーテイスター社内検定」

 広告の文章にはこんな一節がある。

 <この素晴らしいお茶とその文化を、もっと多くの人に楽しんでほしい。日本だけでなく、世界の人たちにも。今日も、明日も、ずっと先の未来までも。>

 日本に、世界に、そして未来に日本茶の文化を伝えるには何をすべきか。

 伊藤園がまず取り組んだのは人づくりだった。茶葉の歴史や飲用効果、製造工程などに関する知識を社員に学んでもらう機会を作ろうと、独自の「ティーテイスター社内検定」を1994年に始めた。レベルに応じて1~3級まであり、試験は年に1回。検定を始めてから最上位の1級合格者はわずか15人しかいない。3級でも合格率は20%未満という「難関」だ。合格すれば「茶師」と呼ばれるようになる。いわば「お茶のソムリエ」だ。

「正しい知識と文化の継承を」

  • 2016年に中尊寺で行われた「大茶会」(伊藤園提供)
    2016年に中尊寺で行われた「大茶会」(伊藤園提供)

 次に取り組んだのは、お茶の啓発活動だ。難関を突破したお茶の専門家である茶師たちは、各地の学校や公民館などで、おいしいお茶の入れ方を教えるセミナーや体験型の「大茶会」を開いている。こうした催しは全国で年間に1000回以上実施した。担当部署であるT2020推進部課長の菊地洋子さん(48)は「お茶は地域や茶葉の種類によって味も楽しみ方も違う。お茶を販売する会社だからこそ、正しい知識と文化を継承していかないといけない」と力を込める。

外国人観光客向けの取り組みも

  • 成田空港第1ターミナルで展開する「FaSoLa 伊藤園」(伊藤園提供)
    成田空港第1ターミナルで展開する「FaSoLa 伊藤園」(伊藤園提供)

 増え続ける訪日外国人観光客向けの取り組みにも力を入れる。

 外国人観光客が多く訪れる世界遺産の中尊寺(岩手県)や厳島神社(広島県)などでも大茶会を開催。成田空港や羽田空港にある直営店舗では、お土産に高級な茶葉やティーバッグを購入する客が増えているという。財務省の貿易統計によると、世界的な和食ブームに乗って、2016年の緑茶の輸出量は4000トン超と、2005年から約4倍に増えた。伊藤園にとってもチャンスだ。

  • #052
    #052

 羽鳥さんは「入れ方や飲み方は変化しても、お茶を楽しみ、人をもてなすことは変わらない。50年後も100年後も、世界中の人たちをお茶の力で笑顔にしたい」と強調する。

 お茶で、世界を、笑顔に――。そんな願いとともに、お茶屋の挑戦は続く。

(経済部 三宅直)

◆伊藤園
 1966年、静岡市に設立された「フロンティア製茶」が前身。1969年に商号を現在の「伊藤園」に変更した。主力ブランドの「お~いお茶」は、累計販売が300億本(500ミリ・リットル換算)に上るロングセラー。国内の緑茶飲料市場に占める同社のシェア(市場占有率)は3割を超える。手軽に楽しめるティーバッグや野菜飲料なども販売するほか、傘下にコーヒーチェーンのタリーズコーヒージャパン、乳業メーカーのチチヤスがある。2017年4月期の連結売上高は4758億円。本社は東京都渋谷区。グループ連結の従業員数は約8200人。伊藤園のウェブサイトは こちら