進化する素材の可能性と歩む~旭硝子

経済部 石黒慎祐

 淡い色遣いのイラストをよく見てみると、自由奔放に伸びるひものようなものが見える。その上に浮かぶのは車だろうか。では、ひもに見えたものは道路?

 まるで、街をふかんしている気分にさせる不思議なイラストだ。

民間で板ガラス国産化に挑んだ歴史

  • 2017年9月8日付読売新聞朝刊の全面広告
    2017年9月8日付読売新聞朝刊の全面広告

 このイラストは、2017年9月8日付の読売新聞朝刊に掲載された旭硝子の全面広告だ。近未来の地球をイメージしたものだが、描かれているものが何か、あえて具体的に明示されていない。イラストを見た人の想像に任せているのだという。

  • 広報・IR部の玉城部長(右)と小田広報担当部長
    広報・IR部の玉城部長(右)と小田広報担当部長

 「想像できたものは、私たちの作るガラスなどの素材で実現できるものかもしれない。広告を見た人に素材の可能性が伝われば」と、広報・IR部長の玉城和美さんは狙いを話す。

 今回の広告は、同社の創立110周年を記念したものだが、一般的な周年を祝う広告とは一線を画した。「進化し続けるものだけが、生きのこる。」とのコピーが印象的だ。

 こうしたコピーを使った背景には、旭硝子の誕生の歴史がある。同社が誕生した1907年当時、国は板ガラスの国産化に失敗していた。そのため、三菱グループ創始者の一族である岩崎俊弥が民間企業で国産化しようと設立したのが旭硝子だった。小田健一広報・IR部広報担当部長は、「チャレンジ精神こそが旭硝子の原点」と話す。

楽器のようにたたいたりできるガラスも

 会社の事業は企業間取引(BtoB)が主体だが、ガラスの持つ可能性を一般消費者に伝える挑戦も続けている。

  • 「FEEL! GLASS」展の模様
    「FEEL! GLASS」展の模様

 その一つが、2017年11月に東京・表参道で開催したガラス芸術作品の展示会「FEEL! GLASS」だ。

 FEEL(感じる)という言葉通り、作品に触れて楽しめる展示会で、巨大なガラスで映像を映し出し、神秘的な空間を演出したり、ガラスを楽器のようにたたいたりできるガラス作品が並んだ。小田さんは「世の中の変化のスピードは速い。例えば、車なら、EV(電気自動車)、自動運転など。そうした変化に『ガラスを使えば、こんなことができますよ』という提案の場になれば」と話す。期間中、約1万3000人の来場者にガラスの可能性を伝えた。

多様な素材を手がける「AGC」へ

  • #059
    #059

 18年7月、旭硝子は、創業時から続く社名を「AGC」に変更する大きな節目を迎える。これまで、AGCという名前は、子会社名で使用していたが、同社の事業分野がガラス以外にも、電子部材や化学品など様々な素材に広がっていることなどから、社名変更を決断したという。

 紀元前からの歴史を持つガラスは、雨風を防ぐ窓ガラスや食器、レンズなど社会の発達に大きく貢献してきた身近な素材の一つだ。

 現代では、通信用の光ファイバー、スマートフォンの画面などに使われ、ガラスの可能性はさらに広がる。玉城さんは「ガラスのイメージは、旧来とは大きく変化している。社名が変わってもその変化に対応し、進化し続ける会社でありたい」と話す。

 社名から祖業の硝子の文字は消える。だが、旭硝子が生活に身近な素材を生み出す企業であることに変わりはなさそうだ。


◆旭硝子
 1907年創立。09年に兵庫県の尼崎工場(現・関西工場尼崎事業所)で、日本で初めて板ガラスの生産を始めた世界有数のガラスメーカー。現在は、電子部材など幅広い素材も手がける。本社は、東京都千代田区。2016年12月期の連結売上高は1兆2825億円。連結従業員数は5万963人(16年12月末)。ウェブサイトは こちら

2018年1月18日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun