邦画アーカイブ 世界に誇れる資産を守ろう

 日本が生み出してきた映画作品は、国際的評価が高い。文化資産として、後世に確実に継承するとともに、活用を図っていくことが大切である。

 映画フィルムを中心とした資料の収集、保存にあたる「国立映画アーカイブ」(東京・京橋)が今月誕生した。東京国立近代美術館の一部門だったフィルムセンターが独立した。国内で6番目の国立美術館となった。

 活動の柱は、1952年から続くフィルムライブラリー事業だ。寄贈や購入で毎年約3000本を収集してきた。所蔵数は日本映画を中心に約8万本に上る。

 国際映画祭で脚光を浴びた黒沢明や溝口健二らの名作から近年のアニメまで、日本映画は世界で独自の輝きを放ってきた。

 だが、欧州と比べて、日本の保存活動は大きく出遅れた。戦前の映画の多くは散逸したままだ。世界的にファンの多い小津安二郎の作品ですら、戦前のものは「お嬢さん」など17点が行方不明だ。

 今回の独立には、組織の自律性を高め、機能強化する狙いがあろう。収集活動に、より力を入れることが求められる。国民が日本映画の価値を再認識するための情報発信にも努めてもらいたい。

 文化財としての観点からも、映画の価値は見直されている。1899年に製作された所蔵作の「紅葉狩」が、映画としては初めて、2009年に国の重要文化財に指定された。歌舞伎を演じる様子を撮影した映像だ。

 映画は、多くの人にてもらってこそ、価値が高まる。アーカイブ内での企画上映に、今以上に趣向を凝らしてほしい。

 どのような発想で名作を撮影したのか。実際に鑑賞すれば、過去の著名な映画人の製作意図を感じ取れるかもしれない。次代を担うクリエイターたちが、大きな刺激を受けることもあるだろう。

 近年の劇映画は、デジタル作品が主流となっている。その収集、保存体制の構築は、長期的な懸案だ。データや機材の規格変更などに対応していく必要がある。

 寄贈フィルムを事前検査するための人員確保も課題だ。

 政府は、クールジャパン戦略の柱の一つとして、映画振興を掲げる。所蔵作品の海外での上映など、ソフトパワーとして映画を活用することは、日本のイメージアップに向けた有効な手法だ。

 アーカイブが国内外のイベントに関与し、活動への理解を広める。それにより、収集や資金面での支援の輪が拡大するだろう。