対シリア攻撃 アサド政権の蛮行を阻めるか

 シリア内戦で化学兵器がこれ以上使われる事態を阻止することが先決である。米露両国がシリアを舞台に軍事的な対立をエスカレートさせることがあってはならない。

 アサド政権軍が再び化学兵器を使用した疑いが強まり、米国が英仏との3か国による共同作戦に踏み切った。首都ダマスカス近郊の化学兵器研究施設や中部ホムスの貯蔵庫など3か所を爆撃した。

 トランプ米大統領は演説で、「化学兵器の製造、拡散、使用に対する強い抑止力を確立する」と、攻撃の目的を語った。

 昨年の化学兵器使用疑惑の際、米軍は単独でシリアの空軍基地を攻撃したが、アサド政権の行動を変えられなかった。英仏との連携で攻撃規模を拡大し、化学兵器施設を標的とすることで、さらなる使用を防ごうとしたのだろう。

 安倍首相は、「米英仏の決意を支持する」と表明した。

 アサド政権は2013年に化学兵器禁止条約に加盟した後も、サリンや塩素ガスを保持し、攻撃に使っていると指摘される。

 7日の反体制派拠点に対する空爆で、幼い子どもらが口から泡を吹いて倒れる映像が伝えられた。おぞましいと言うほかない。

 国際規範に背く蛮行は放置できない。米英仏の攻撃は、核のみならず、化学兵器の開発も続け、シリアに技術提供をしているとされる北朝鮮への警告となろう。

 アサド政権の後ろ盾のロシアが化学兵器使用を阻止する責任を果たしていないのは看過できない。ロシアは3か国の攻撃を「シリアへの侵略行為」と主張し、報復措置を示唆する発言も出ている。

 シリアには、過激派組織「イスラム国」掃討を担う米軍部隊と、アサド政権軍を支援する露軍部隊がそれぞれ駐留する。米露は不測の軍事衝突を防ぐ必要がある。

 懸念されるのは、トランプ氏が国内の支持者を意識し、米国の中東への関与を弱める方針を繰り返し打ち出していることだ。

 今月初めには、「イスラム国」掃討がほぼ完了したとして、米軍の早期撤退に言及した。今回の演説でも、「無期限のシリア駐留は求めない」と強調した。

 米国がシリアから手を引いた後の「力の空白」を、ロシアやイランが埋めるのは避けられまい。アサド政権軍の非人道的な行為への歯止めはかからなくなる。

 トランプ氏は、「米国第一」主義を理由に、中東の平和と安定を担ってきた米国の責務を放棄すべきではない。