中国の空母増強 米軍への対抗が緊張を高める

 米国に対抗し、中国の軍事的影響力を拡大させる戦略の一環だと言えよう。世界の安全保障環境を激変させる動きには、警戒が欠かせない。

 中国初の国産空母が、初めての試験航海を実施した。来年にも就役する。

 ウクライナから購入した船体を改修し、2012年に就役した「遼寧」に次ぐ2隻目の空母だ。3隻目は上海で建造中で、原子力空母計画も浮上している。

 将来は4隻以上を保有し、潜水艦や駆逐艦などを含めた空母部隊の運用を目指す。性能面での課題は多いが、これほどの急ピッチの整備は例がない。

 中国軍トップの習近平国家主席は4月、南シナ海での観艦式で「世界一流の海軍建設に努力せよ」と訓示した。米軍が圧倒的に優位に立つ戦略ミサイルや潜水艦と並び、空母を戦力増強の中核と位置づけているのは間違いない。

 米海軍は世界最多の空母11隻を保有し、さらに1隻の追加を予定する。中国と領土問題などを抱えるインドも、空母建造を進める。中国の動向が軍拡競争に拍車をかけることが懸念される。

 習政権は、九州南方から沖縄、台湾などを結ぶ中国独自の防衛ライン「第1列島線」を越えて、伊豆諸島からグアムに至る「第2列島線」まで、制空・制海権を確保する戦略を描く。

 「遼寧」は、南シナ海や太平洋で、戦闘機の発着艦訓練を繰り返している。台湾統一をにらみ、米軍の介入を排除する能力を高める狙いは明白だ。

 中国がミサイル演習で台湾を威嚇した1996年の台湾海峡危機では、米国は空母2隻を派遣し、牽制けんせいした。そうした事態の再現を阻みたいのだろう。

 南シナ海で空母運用を常態化させ、実効支配を強める可能性もある。中国が造成した人工島周辺では、米軍が「航行の自由」を維持するための巡視活動を行う。緊張が高まるのは避けられまい。

 看過できないのは、南シナ海からインド洋にかけての沿岸国で、中国が経済支援と引き換えに、軍事拠点への転用が可能な港湾整備を進めていることだ。

 中国の影響力増大によって、海上交通路の自由な往来に支障を来すことがあってはならない。

 中国軍の装備などの実態は不透明だ。日本政府は、再開した首脳レベルの対話を通じ、軍備増強の目的を説明するよう求める必要がある。米軍と自衛隊の対処能力を向上させることも肝要だ。