中東情勢の緊張 米国は沈静化へ責任を果たせ

 イスラエルへの一方的な肩入れと、イランとの過度の対決姿勢に、戦略性はうかがえない。トランプ米大統領の中東政策が地域の緊張を高めているのは問題だ。

 米政権が、イスラエルの首都と認定したエルサレムに、大使館を移転した。パレスチナ自治区ガザなどで激しい抗議デモが起き、イスラエル軍の発砲により、多数の死傷者が出た。

 国連安全保障理事会の緊急会合では、発砲を非難する意見が多数を占めた。米国は、ガザを実質的に支配するイスラム主義組織ハマスがデモの過激化を扇動していると反論した。暴力の連鎖を食い止めることが先決である。

 イスラエルはエルサレムを「永遠・不可分の首都」と主張する。パレスチナ自治政府は、東エルサレムを将来の国家の首都と位置付ける。エルサレムの帰属は、「2国家共存」に向けた和平交渉で定めることが原則とされてきた。

 トランプ氏は新たな中東和平案の提示にも意欲を示す。仲介役を果たしたいのなら、イスラエルの立場を無条件に支持するのでなく、東エルサレムでのユダヤ人入植活動の停止を促すなど、対話の環境作りを進めるべきだった。

 自治政府はトランプ氏に対する不信感をあらわにしている。2014年から中断している和平交渉の再開は絶望的だと言えよう。

 トランプ氏が大使館移転を強行した背景に、親イスラエルの支持者へのアピールがあるのは間違いない。11月の中間選挙と20年大統領選を念頭に、公約の実行を優先したのではないか。

 「2国家共存」を支持する日本は、米国と一線を画し、移転式典出席を見送った。中東情勢のさらなる悪化を防ぐため、関係国に冷静な対応を求めるなど、役割を果たさねばなるまい。

 懸念されるのは、イスラエルとイランの対立が激化し、大規模な軍事衝突に発展する事態だ。

 イスラエルは10日、「シリア領内にあるイランの軍事施設を空爆した」と発表した。占領地ゴラン高原の軍事拠点が攻撃を受けたことへの報復だとしている。米国のイラン核合意離脱により、強硬姿勢に拍車がかかるのは必至だ。

 イランとサウジアラビアの代理戦争の様相を呈するイエメン内戦も、終結の兆しが見えない。

 イランの影響力拡大が周辺国の脅威となるのは確かだが、軍事手段だけでは解決できまい。トランプ氏には、外交努力で緊張を沈静化させる責任がある。