選挙公報、全戸配布が原則も…「不配地域」存在

  • 市議選の選挙公報(左)が一部世帯に届いていなかった兵庫県西脇市。対策が検討されている(西脇市役所で)
    市議選の選挙公報(左)が一部世帯に届いていなかった兵庫県西脇市。対策が検討されている(西脇市役所で)

 国政選挙などで、立候補者の氏名や所属政党、経歴、政見などが掲載された選挙公報。

 公職選挙法や条例で有権者が住む全世帯に配布するよう規定されているが、実際には、オートロックのマンションの増加などによる〈不配地域〉が存在する。配達の不備を理由に選挙無効を訴えるケースもある。全戸配布を定める法と現実が乖離かいりしている現状を探った。

 「選挙公報が最大1300世帯に配布されなかった」。10月22日投開票の兵庫県西脇市議選で落選した男性(63)が同31日、不配を理由に選挙の無効を求めて異議を申し立てた。

 同市では、条例で選挙公報を投票日の「2日前までに配る」と規定。市の広報紙と同様、区長らに委託して各世帯に届ける、としていた。ところが、一部の集合住宅に対しては、住民側の求めに応じて広報紙を配布せず、選挙公報も配らなかったという。

 市選管は、不配を認めた上で「1300世帯は過大で、選挙結果に異動を及ぼす恐れがない」として男性の訴えを棄却。不服とした男性は今月、県選管に審査を申し立てた。

 市選管は、不配世帯は約300世帯と推定。市選管事務局は「全戸配布」を目指し、ポスティング業者への依頼も検討するという。

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 選挙公報が完全に行き届かない状況は、他の自治体でも起きているようだ。

 神戸市選管は、西脇市と同様、自治会や婦人会などに配布を委託。しかし、マンションなどでオートロックのため館内に入れなかったり、管理人に配布を断られたりするケースもあるといい、担当者は「郵送など代替策をとっているが、全世帯に届いているとは言い難い」と認める。

 公選法では、全戸配布のための〈次善策〉として、新聞折り込みによる配布も認めている。県選管によると、県内では姫路市や明石市、稲美町など13市町が新聞折り込みに頼っている。購読していない世帯もあり、姫路市選管の担当者は、全戸配布できていない可能性を認めた上で、「郵送も検討したが、コストが高く難しい。自治会にも配布を依頼するなど、法と現実との溝を埋める努力を続ける」と強調する。

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 明るい選挙推進協会が実施した2016年7月の参院選での全国意識調査では、投票に際して「役に立ったもの」(複数回答)として、選挙公報は、候補者の政見放送(テレビ)に次いで2番目だった。選挙での有用性は決して低くない。

 立命館大法学部の倉田玲教授(憲法)は「法や条例で全世帯に配布すると定めている以上、コスト面などの言い訳をするべきではない。選管は職責の重さを認識し、代替策を考えるべきだ」と話している。(小宮宏祐)

 ◆選挙公報=国政選挙と都道府県知事選は、公選法で発行が義務付けられている。都道府県議選と市町村長・議員選については任意で、公選法の規定に準じた条例を制定している自治体が発行できる。「住民は候補者のことをだいたい知っている」(市川町)、「人手不足」(福崎町)など、比較的規模の小さな自治体では発行していないケースもある。