自民圧勝も波乱予感「鍋の様子ふたで見えない」

  • 決起大会後、父・高村正彦氏(左)と並んで写真撮影に応じる正大氏
    決起大会後、父・高村正彦氏(左)と並んで写真撮影に応じる正大氏

 「皆さまのために、しっかり働き、恩返しをしたいと思います」

 衆院選投開票日の22日夜、早々に当選確実を決めた山口1区の自民新人・高村正大氏(46)は、事務所近くの特設会場に詰めかけた支援者らにそう誓い、万歳三唱で初陣を締めた。

 選挙戦では、党副総裁で父の正彦氏(75)から後援会組織をほぼ引き継ぎ、県議、市議らがフル回転。正彦氏はマイクを握ることはなかったが、後援会関係者に自ら長男への支援を求めた。結果、次点の希望新人候補を9万6000票以上引き離す圧勝を収め、正彦氏の前回の得票をも約1万3000票上回った。

 正大氏は「父がしっかり仕事をしてきたから、安心できるという思いが有権者にあったと思う。今回はあくまでも期待の票だ」と気を引き締めた。

 他の三つの選挙区でも自民候補が7割前後の得票率で完勝し、3回連続の4議席独占。ただ、その水面下では、火種もくすぶ。

 「首相にも了解を取って決めたので、頼みます」。安倍首相が解散表明した9月25日夕、首相と会談し、引退意向を伝えた正彦氏は、後継を長男とすることを県議らに電話で伝えた。

 党では新人候補は公募で選考するケースが多い。だが、公募には短くても1か月かかることなどから、県連は同27日に正大氏の公認を党本部に申請。翌28日に公認を得た。

 県連内部からは、通常の手順を経ずに「世襲」のレールが敷かれたことへの不満の声も聞かれる。あるベテラン県議は「首相のおひざ元の県連。一声があれば、『わかりました』としか言えない」と話す一方で、こう続けた。「こんな手は何度もは使えない」

 発言の念頭にあるのは、元官房長官の河村建夫氏(74)が10選を果たした3区。次期衆院選では代替わりもささやかれ、後継には父不在の選挙戦で代役を務めた長男で秘書の建一氏(41)も取り沙汰される。

 ただ、県連内には参院議員の林芳正・文部科学相(56)の3区でのくら替え出馬を推す声があり、県連は当初、候補者を一本化できず、公認申請を党本部に白紙で提出する一幕があった。結局は党本部が河村氏の公認を内定し、林氏も「党の決定に従う」としたが、一部の地元経済界関係者や県議らの林氏のくら替え待望論は根強い。

 また、県選管によると、小選挙区の区割りの見直しが2022年以降に行われる見通しだ。15年の国勢調査に基づき、県も定数削減の対象となるとの試算もあり、次々回の衆院選では山口の小選挙区は3に減る可能性がある。その場合、難しい候補者調整が迫られる。

 圧勝続きの「1強」体制で、一枚岩のように見える自民。だが、ある県議は波乱を予感する。「ぐつぐつ煮えたぎる鍋の様子が、ふたをして見えない。それが現状だ」