テレビ

ストーカー、サイコパス型…冬ドラ悪女を徹底比較

1980年代の悪女を演じた水野美紀

 最後は「今期の悪女MVP」とも言っていい「奪い愛、冬」の森山蘭。蘭は通り魔事件をでっちあげて森山信(大谷亮平)と恋人の池内光(倉科カナ)を別れさせて、信と結婚。その後、再会した2人を監視しつつ、「(通り魔事件で負傷した)足がうずくの」と信にさすらせて罪の意識を植え付け、光に土下座を強要するなど、“過度な激情型”の悪女です。

 蘭には悪女の自覚があり、「目的を果たすためなら何でもやる」と開き直っているため、恥も外聞も気にしません。周りで誰が見ていようが、周りから自分がどう見られようが関係なし。「自分の行動はさておき、他人を徹底的に痛めつける」という極端に理不尽な悪女を水野美紀さんがけれん味たっぷりに演じました。

 蘭のキャラクターは、1980年代の大映ドラマや、ドロドロ愛憎劇の昼ドラでよく見られた往年の悪女キャラ。「スチュワーデス物語」の片平なぎささん、「牡丹(ぼたん)薔薇(ばら)」の小沢真珠さんらが悪女を熱演して話題を集めましたが、現実離れしすぎているため近年は減っていました。しかし、今回の「蘭が悪いことをするほどネットが盛り上がる」という反響の大きさを見る限り、現代向けの悪女であることが分かりますし、今後も“過度な激情型”は見られそうです。

 その他、「突然ですが、明日結婚します」(フジテレビ系)の不倫を引きずる女優・桜木夕子(高岡早紀)、「嘘の戦争」(フジテレビ系)の女詐欺師・十倉ハルカ(水原希子)、「スーパーサラリーマン左江内氏」(日本テレビ系)の毒舌鬼嫁・左江内円子(小泉今日子)も、悪女のカテゴリーに入れてもいいでしょう。

「目をそらす」から「最も見たい」に変化

 連ドラに悪女が登場する理由は、「主人公らとの対立構図を盛り上げ、サスペンス性を高めたい」から。視聴者は悪女の存在によって主人公らへの感情移入が促され、ハラハラドキドキさせられるのです。

 この冬に多くの悪女がそろい踏みしたのは、ひとえに話題性を狙ってのこと。この1年あまり、「僕のヤバイ妻」(フジテレビ系)の木村佳乃さんと相武紗季さん、「不機嫌な果実」(テレビ朝日系)の栗山千明さんと高梨臨さん、「ナオミとカナコ」(フジテレビ系)の広末涼子さんと内田有紀さん、「サイレーン」(フジテレビ系)の菜々緒さんなど、悪女の存在がネットや週刊誌で盛り上がりました。かつて悪女の登場シーンは「目をそらしたくなる」ものでしたが、現在では「最も見たい」と思わせるものに変わっているのです。

  • 番組をリアルタイムで見てほしい制作側にとって、悪女は重要な存在だ。写真は「A LIFE~愛しき人~」の榊原実梨(菜々緒)(C)TBS
    番組をリアルタイムで見てほしい制作側にとって、悪女は重要な存在だ。写真は「A LIFE~愛しき人~」の榊原実梨(菜々緒)(C)TBS

 制作サイドにとって譲れないのは、「高視聴率を獲得するためにリアルタイムで見てもらう」こと。連ドラの悪女は、視聴者が「思わずツイートしたくなる。SNSに書き込みたくなる」、ネットメディアや週刊誌が「クリックされやすい。記事にしやすい」状態を作り、リアルタイム視聴を増やす重要な存在なのです。

 一方、女優サイドは悪女役のオファーを「待ってました!」と、喜んで引き受ける人がほとんど。悪女役はインパクトが強い上に、美しさと悪さのギャップを見せやすいなど演技の難易度は高くないため、「女優としてひと皮むけるチャンス」と捉える人が多いのです。特に「清純派」のイメージがある女優は新境地を(ひら)く絶好機。今期で言えば、田中麗奈さんや吉岡里帆さんが、これまでのイメージをいい意味で裏切る冷酷な姿を見せて称賛を集めています。

 ここで挙げた悪女5タイプの共通点は、「罪の意識がない」こと。そして、これまでの悪女よりも圧倒的に強くふてぶてしい姿を見せてきました。すでに終了した「奪い愛、冬」の蘭と、「就活家族~きっと、うまくいく~」の優子は、最後まで罪の意識がない悪女のままでした。残り3人の悪女はどんな結末を迎えるのか。「連ドラのトレンドをつかむ」という意味でも、悪女たちの結末は必見です。

プロフィル
木村 隆志(きむら・たかし)
 コンサルタント/コラムニスト。ティーンから中高年世代まで、幅広い年齢層の相談を受け続け、コンサル数は対面だけで通算1万組を突破。一方でコラムニストとしても活動し、芸能・エンタメを中心に毎月20本超のコラムを寄稿している。最新刊『独身40男の歩き方』(CCCメディアハウス)が発売中。その他の著書に、『話しかけなくていい!会話術』(CCCメディアハウス)、『40歳からはじめる 一生の恋人の見つけ方』(同文舘出版)、『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)、『好感度がアップする プラスひと言会話表現605』(こう書房)、『友活はじめませんか? 30代からの友人作り』(遊タイム出版)などがある。

【あわせて読みたい】
・復讐劇「嘘の戦争」が視聴者の心をつかんだワケ
・「東京タラレバ娘」に見るアラサー女性の闇
・SMAP解散1か月、気になる「その後」教えます
・「1月のプロポーズ」が幸せを呼ぶこれだけの理由
・くりぃむ有田に続け、大人の合コン「5つの心得」