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「直虎」の視聴率低迷はやはり「女大河」のせい?

PRプロデューサー 殿村美樹

ヒットするはずだった「直虎」

  • 今川氏真を演じるのは歌舞伎俳優の尾上松也さん(NHK提供)
    今川氏真を演じるのは歌舞伎俳優の尾上松也さん(NHK提供)

 まず主人公はヒットの要件を満たしています。歴史上、ほとんど知られていなかった井伊家の娘が、家を守るためにいったん出家したものの、周囲の期待に応えて城主となり、戦国時代を生き抜いていくという物語ですから、“無名の人物が周囲に求められて力を得る”という点はマッチしています。さらに、主人公はいつも明るく前向きで、ドラマ全体に明るいムードが漂っています。

 そればかりか、井伊直虎は「戦国大戦」「戦国無双」といったゲームの世界では、すでに人気の女武将です。普段はLINEしか見ないようなゲーム好きの若者が大河ドラマに関心を持つ可能性を秘めています。

 NHKはきっとこうした緻密な研究分析を重ねた結果、井伊直虎を大河ドラマの主役に抜擢(ばってき)したのでしょう。

 しかし、残念なことに、「直虎」には決定的なものが足りません。

 それは、「直虎」が今のところ、“誰もが認める大権力”と戦っていないという点です。「篤姫」の新政府、「ドクターX」の白い巨塔にあたる大権力です。戦国時代なら織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といったところでしょうか。

 それどころか、直虎はパワハラ三昧の主君・今川氏真から嫌がらせを受け続けているのに、忠義を尽くそうと必死になっています。

 「え~、まだ今川の機嫌をとるの? そろそろ“私、失敗しないので”とか言ってリベンジすればいいのに」

 そんなふうにイライラしている視聴者は多いのではないでしょうか。実は私もその一人です。

大河ドラマの限界に挑めるか

 ただこれは、大河ドラマである限り、仕方のないことかもしれません。ゲームならば、直虎と信長を戦わせることは簡単でしょうが、大河ドラマでは、史実を無視できません。歴史上、直虎と信長の一騎打ちなど、どこにも記されていません。「これができれば、ウケること間違いなし」とわかっていてもできません。

 そのジレンマは、「大河ファンタジー」と称し、2016年3月から始まったドラマ「精霊の守り人」にも透けて見えます(最終章は17年11月から放送開始)。制作側は、きっと大河ドラマでありながら、史実にとらわれないファンタジーで描いてみたかったのでしょう。主役に大人気の女優・綾瀬はるかさんを抜擢しても、脇役を実力派のオールスターで固めても、「大河ファンタジー」の視聴率は1ケタから脱することはありませんでした。視聴者はまだ“史実の大河”と“空想のファンタジー”を一緒にするイメージに追いつけないのかもしれません。

 そんな中、「おんな城主 直虎」に突破口を見いだすとしたら、直虎の生涯に謎の部分が多い点を活用することでしょう。史実で証明されている部分が少ないがゆえに、歴史とファンタジーの狭間を狙ったシミュレーションドラマを紡ぐことができる気がします。

 ある意味、これは大河ドラマの限界に挑むことになりそうです。しかし、ドラマ「JIN-仁-」で、主役の外科医を江戸時代にタイムスリップさせ、それでもリアル感いっぱいに描いた森下佳子さんなら、ミステリアスな直虎を、史実の枠から解き放ち、痛快なストーリーに仕立ててくれるかもしれません。これからに期待したいと思います。

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プロフィル
殿村 美樹( とのむら・みき
 PRプロデューサー。京都府宇治市生まれ。TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「ひこにゃん」(滋賀県彦根市)、「うどん県」(香川県)など地方のPR戦略を手がけてきた。「今年の漢字」もプロデュース。主な著書は「テレビが飛びつくPR」(ダイヤモンド社)、「ブームをつくる」(集英社新書)など。

  • 「ブームをつくる」(集英社新書)
    「ブームをつくる」(集英社新書)