ポケモン竜王戦

ポケモン竜王戦~本戦の「対戦環境」を読み解く

 ポケモンバトルの最強プレイヤーを決定する大会「第3回 ポケモン竜王戦」(主催:株式会社ポケモン、共催:読売新聞社・日本将棋連盟)が、2018年1月14日に開催される。12月1~4日にインターネットで予選が行われ、16人の本戦進出が決定した。ポケモンの使用率やわざ構成などから、本戦の環境を予測・分析する。(メディア局編集部 原啓一郎)

ポケモンの「対戦環境」とは?

  • 「ポケモングローバルリンク」の画面。さまざまなデータを確認できる
    「ポケモングローバルリンク」の画面。さまざまなデータを確認できる

 インターネットでの予選は、参加者の年齢ごとに三つのカテゴリで行われた。06年以降生まれの「ジュニアカテゴリ」、02年以降05年以前生まれの「シニアカテゴリ」、01年以前生まれの「マスターカテゴリ」に分けられ、合計で約7500人が参加。このうち16人が、1月14日の決勝大会に駒を進めた。

 ポケモングローバルリンク(PGL)(https://3ds.pokemon-gl.com/)では、各カテゴリのポケモンの使用率や、ポケモンが持つどうぐやわざなどの割合、自分のランキングを見ることができる。PGLの情報は頻繁に更新され、多くのプレイヤーはPGLを参考に、新しいポケモンを育てたり、強いポケモンの対策を練っている。

 将棋でも、ある戦術が流行すると、それに対抗する新たな戦術が生まれるように、流行には移り変わりがある。永世七冠を達成した羽生善治竜王が勝ち続けられたのは、流行を常に追い続け、自分を適応させ続けていたからと評される。

 ポケモンバトルにも将棋と同様に流行があり、多くのプレイヤーは「対戦環境」と呼んでいる。ポケモンやバトルチーム、戦術などの流行を指し、ポケモンを始めとしたターン制ゲームなどで使われる、独特な概念だ。プレイヤーは日々、PGLの情報やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などから、対戦環境を分析、考察している。特にPGLで公開されている、使用頻度が高い上位30匹のポケモンランキングは、対戦環境を分析するための重要な指標だ。インターネット大会「ポケモン竜王戦 予選」でのランキングも公開されており、今回はこのデータから本戦の環境を分析・検討する。

カギを握った「伝説のポケモン」

  • ミュウツー
    ミュウツー

 「ポケモン竜王戦」の特別ルールとして、バトルチームの中に、滅多(めった)に見ることのできない貴重なポケモン「伝説のポケモン」を入れることができる。17年発売の最新シリーズ『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』のパッケージを飾った「日食・月食ネクロズマ」や、スマートフォン向けゲーム『ポケモンGO』にボスとして登場した「ミュウツー」「ホウオウ」といったポケモンが代表的だ。伝説のポケモンは、他のポケモンに比べ、攻撃やすばやさが高かったり、強力なわざやとくせい(※)を持つ。「ポケモン竜王戦」では、どの伝説のポケモンを軸にバトルチームを組むかはもちろん、相手が持つ伝説のポケモン対策をどうするかが重視される。

※とくせい(特性)=攻撃やすばやさのほかに、ポケモンが種類ごとに持つ能力のこと。「相手の攻撃力を下げる」「毎ターン自分のすばやさを上げる」など、バトルに影響を与える。

  • レックウザ(左)とメガレックウザ(右)
    レックウザ(左)とメガレックウザ(右)

 上位30匹にランクインした伝説のポケモンは全部で8匹(2種類のネクロズマは別とする)。このうち特に使用率が高かったのは、「ドラゴン・ひこう」タイプの「レックウザ」だ。メガシンカ(※)した「メガレックウザ」が強力で、ジュニアで8位、シニア・マスターで6位と、高い人気を占めた。

※メガシンカ=特定のポケモンのみができる、一時的にパワーを解放してさらに強さを増すこと。特定のどうぐ「メガストーン」を持たせていれば、バトル中に1匹だけ、好きな時にメガシンカできる。攻撃力などが上がったり、タイプやとくせいが変わることもある。メガシンカしたポケモンは、「メガレックウザ」「メガギャラドス」など、ポケモンの名前の頭に「メガ」がつく。13年発売の『ポケットモンスター X・Y』から導入された。

 通常のメガシンカには、特定のどうぐ「メガストーン」をポケモンに持たせなければならないが、メガレックウザはわざ「ガリョウテンセイ」を覚えていれば、メガストーンを持たずにメガシンカできる。他のポケモンはどうぐを一つしか持てないが、レックウザは全ポケモンの中で唯一、「メガストーン以外のどうぐを持てる、メガシンカするポケモン」となり、メガシンカで上昇させた能力を、どうぐでさらに高めることができる。

 自分の攻撃とすばやさを上げるわざ「りゅうのまい」を使い、わざの威力が上がる代わりに自分のHPが攻撃するたびに減るどうぐ「いのちのたま」を持たせ、高い威力のわざですばやく攻めるタイプが多くを占めた。対策がなければ、全てのポケモンが何もできずに倒されてしまう。

  • 日食ネクロズマ(左上)、月食ネクロズマ(右上)、ウルトラネクロズマ(下)
    日食ネクロズマ(左上)、月食ネクロズマ(右上)、ウルトラネクロズマ(下)

 他にも、『ウルトラサン・ウルトラムーン』のパッケージを飾った2種類の「ネクロズマ」や、『ポケモンGO』に登場して間もない伝説のポケモン「グラードン」が、全カテゴリで上位30匹にランクイン。ネクロズマとグラードンはメガシンカしないが、どうぐでバトル中に姿を変え(※)、能力を大幅に上げることができる。

※バトル中に姿を変える=日食・月食ネクロズマはどうぐ「ウルトラネクロZ」を持たせると、バトル中の好きな時に「ウルトラネクロズマ」に、グラードンはどうぐ「べにいろのたま」を持たせた状態でバトルに出ると、自動的に「ゲンシグラードン」に姿を変える。メガシンカ同様、攻撃などが上がったり、タイプやとくせいが変化する。

  • グラードン(左)とゲンシグラードン(右)
    グラードン(左)とゲンシグラードン(右)

 ウルトラネクロズマは、上位30匹でトップクラスの攻撃力・すばやさを持つ。わざ「フォトンゲイザー」は、相手のとくせいを無視して攻撃できるため、使用率トップのポケモン「ミミッキュ」(後述)に強い。ゲンシグラードンは、「じめん・ほのお」タイプで、本来「みず」タイプのわざに弱いが、とくせいで「みず」タイプわざを無効にできるため、大きなダメージを受ける「効果は抜群」のタイプが一つしかない。防御力も高く、攻撃を耐えながら攻める、重戦車のようなポケモンだ。

一番人気はピカチュウそっくり?

  • ミミッキュ
    ミミッキュ

 伝説のポケモンが多い環境だったが、全カテゴリで最も使用率が高かったのが、伝説のポケモンではない「ミミッキュ」だ。人気のポケモン「ピカチュウ」にそっくりの布をかぶっていて、過去に訪れたピカチュウブームがきっかけで、人に仲良くしてもらおうと、ピカチュウの真似(まね)をしている、寂しがり屋な一面もある。進化もせず、かわいらしい位置づけのポケモンだ。

 愛くるしい見た目に反して、伝説のポケモンより高い人気を集めた理由は、ミミッキュ固有のとくせい「ばけのかわ」があるためだ。「1回だけ相手の攻撃わざを防ぐ」という効果を持ち、このとくせいが非常に強力だ。

 ポケモンバトルというターン制のゲームで、1ターンの行動保証はとても心強い。自分よりすばやさが高いポケモンに先手を取られ何もできずに倒されたり、入れ替えで出したポケモンが、相手に読まれて「効果は抜群」のわざで大きなダメージを負ったりすると、それだけでバトルが一気に不利になる。ミミッキュはそんな致命傷を「ばけのかわ」で防ぐことができるため、必ず何かしらの仕事を果たす。

 加えて、ミミッキュは「ゴースト・フェアリー」の複合タイプ。両方のタイプの攻撃を「いまひとつ」にできるポケモンはほとんどいない。攻撃面以外でも、自分の攻撃力を大きく上げる「つるぎのまい」や、5ターンの間、すばやさが低いポケモンから行動できるようになる「トリックルーム」といった優秀な変化わざを多く覚える。

 「つるぎのまい」を1度使われれば、攻撃が伝説のポケモンに匹敵する。「トリックルーム」を使われれば、すばやさが高い伝説のポケモンの行動順が後になり、不利になる。ミミッキュと相対したプレイヤーは、ミミッキュを何もさせずに倒したいところだが、「ばけのかわ」があるため、何かしらの行動を許さざるを得ない。この「1ターンの行動保証」が、ミミッキュの強さだ。

懐かしのポケモンもまだまだ現役

  • ゲンガー(左)とメガゲンガー(右)
    ゲンガー(左)とメガゲンガー(右)

 1996年に発売された「ポケットモンスター 赤・緑」では、151種類のポケモンが登場した。その中には、今も対戦環境の中心にいるポケモンもいる。

 「ゴースト・どく」タイプのポケモン「ゲンガー」は、ジュニア、シニアで9位、マスターで4位にランクイン。メガシンカした「メガゲンガー」のとくせい「かげふみ」は、「相手のポケモンを交代できなくする」という効果で、メガゲンガーに弱いポケモンを、逃がさずに倒すことができる。覚えるわざも、自分が倒された時に相手も倒すわざ「みちづれ」や、相手を「ねむり」状態にし、一定のターン動けなくする「さいみんじゅつ」など、テクニカルなものが多い。すばやさも上位30匹中トップクラスで、トリッキーな戦術で相手をほんろうする。

  • ギャラドス(左)とメガギャラドス(右)
    ギャラドス(左)とメガギャラドス(右)

 「世界で一番弱い」とされる「コイキング」が進化した「ギャラドス」も、ジュニア17位、シニア11位、マスター7位と健闘。メガシンカした「メガギャラドス」が強力で、相手のとくせいを無視できるとくせい「かたやぶり」を持つ。ミミッキュの「ばけのかわ」を無視して攻撃できるため、ミミッキュが多い環境に適したことが、高い人気につながった。

 他にも、アニメで主人公のエースとして活躍した「リザードン」(ジュニア18位、シニア12位)や、どんなポケモンにも変身できる「メタモン」(マスター20位)もランクイン。懐かしのポケモンが今も活躍できるという点も、このゲームの魅力ともいえる。

本戦はどうなる?

  • メタモン
    メタモン

 予選環境では、思った以上に「絡め手」が少ないのが意外だった。伝説のポケモンのすばやさは比較的高いため、すばやさを逆転させる「トリックルーム」を軸にしたバトルチームが一定数いると予想したが、上位30匹でこのわざを覚えていたポケモンは3匹(マスターカテゴリ)と少ない。伝説のポケモンの高いすばやさと攻撃力を生かした、力と力のぶつかり合いが頻発すると予想される。

 ばけのかわを持つミミッキュは、引き続き高い人気を保つだろう。伝説のポケモンが多い「ポケモン竜王戦」でも、何らかの仕事をこなすことはランキングで証明済みだ。メガギャラドスやネクロズマなどでばけのかわを無視することもできるが、ミミッキュ側もそれは織り込み済み。ばけのかわに対応するには、的確な立ち回りが求められる。

 カテゴリごとに人気のポケモンが異なるため、全ての年代が集まる本戦では、想定外のポケモンや戦術と出会うこともあるだろう。上位30位にランクインしていないポケモンが、予想外の活躍を見せるかもしれない。同じようなバトルチームでも、小学生と大人で立ち回りが異なる場合がある。予選を勝ち上がったプレイヤーたちの、レベルの高いバトルに期待したい。

 注目しているのが、マスターランク20位の「メタモン」の活躍だ。メタモン自身は攻撃わざを覚えないが、どんなポケモンにも変身でき、HP以外の全ての能力、わざ、とくせいをコピーする。同じわざしか使えなくなる代わりにすばやさが上がるどうぐ「こだわりスカーフ」を持たせ、伝説のポケモンやメガシンカポケモンに変身する戦術が主だが、場に出すタイミングや、使うわざの選択はとてもシビアだ。メタモンを使いこなすプレイヤーが本戦に登場すれば、台風の目になるだろう。

本戦の結果もお伝えします

 本戦の決勝戦と3位決定戦は、全てのターンの動きを「棋譜」として紹介します。プレイヤーの感想を織り込みながら、1手ずつ分析・解説します。

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