ポケモン竜王戦

ポケモン竜王戦総括~ゲーム部門の決勝戦を解説

 ポケモンバトルの最強プレイヤーを決める「第3回 ポケモン竜王戦」(主催・株式会社ポケモン、共催・読売新聞社、日本将棋連盟)が14日、東京・大手町のよみうり大手町ホールで開かれた。ゲーム部門の優勝は横浜市戸塚区の中学3年生、砂押慶亮(すなおし・けいすけ)さん(15)、カード部門は東京都杉並区の大学4年生、七山諒太郎さん(22)となった。ゲーム部門の決勝戦を振り返り、解説する。(メディア局編集部・原啓一郎)

バトルチーム分析~コンボVS対応力

  • ゲーム部門決勝戦で、対戦する砂押選手(左)と星野選手。ゲーム画面はスクリーンに映し出された
    ゲーム部門決勝戦で、対戦する砂押選手(左)と星野選手。ゲーム画面はスクリーンに映し出された

 決勝戦に勝ち上がったのは、砂押選手と、マスターカテゴリ(2001年以前生まれのプレイヤーが参加したインターネット予選)の星野風太選手。両者のバトルチームを紹介する。

 砂押選手は伝説のポケモン、ルナアーラが軸のチームだ。主な戦術は、ルナアーラの「さいみんじゅつ」で相手のポケモンを行動不能にして、「めいそう」で自分の能力を上げるというもの。バシャーモやカプ・テテフ、ジュペッタがルナアーラをサポートする。エース役とサポート役の役割が分かれており、コンボが決まれば強さを発揮するが、エース役が倒されると息切れする弱点もある。

 星野選手のチームは、幅広い対応力が特徴だ。ウルトラネクロズマに強いあくタイプを持つイベルタルを、伝説のポケモン枠に採用し、カプ・コケコとアーゴヨンに能力を上げるどうぐを持たせている。この3匹は、攻撃しながら控えのポケモンと交代するわざ「とんぼがえり」「ボルトチェンジ」を覚えているため、苦手なポケモンにはダメージを与えながら、有利なポケモンと入れ替わる。対応力は高いが、砂押選手のような、ポケモンの能力を上げる戦術に対しては、相手が能力を上げ切る前にエースを倒さなければ、押し切られてしまう。

 お互いのチームを見ると、砂押選手のマンムーが星野選手の多くのポケモンに強いようだ。「じめん」タイプのわざ「じしん」が6匹中4匹に「効果は抜群」で、「こおり」タイプのわざ「つららばり」がイベルタルに「効果は抜群」だ。「つららばり」は連続攻撃(1ターンに2~5回攻撃する)なので、ミミッキュの「ばけのかわ」も剥がしながら攻撃できる。いかにマンムーを通すかも、試合のポイントとなりそうだ。

 1本先取で行われた予選と異なり、決勝トーナメントは2本先取で行われる。

  • 砂押選手のバトルチーム
    砂押選手のバトルチーム
  • 星野選手のバトルチーム
    星野選手のバトルチーム

1戦目~「とつげきチョッキ」カプ・コケコが光る

 1匹目は、砂押選手はカプ・テテフを、星野選手はアーゴヨンを選択。カプ・テテフのとくせい「サイコメイカー」で、場が5ターンの間「サイコフィールド」の状態になった。サイコフィールド状態では、先制わざ(素早さに関係なく、先に攻撃できるわざの総称)が多くのポケモンに対して使えなくなるため、先制わざの「ふいうち」(※)を持った、星野選手のクチート、イベルタルは動きにくくなった。

(※)ふいうち=あくタイプのわざで、「相手のポケモンが攻撃わざを使っていれば、先に攻撃できる」効果を持つ。通常の先制わざに比べて威力が高いが、相手のポケモンがへんかわざを使ったり交代すると、失敗する。使いこなすには高度な読みが必要。決勝戦では両選手の読みに大きな影響を与えた。

前半~高威力のわざの応酬

  • 3ターン目。カプ・コケコ(手前)がイベルタルの「ふいうち」を耐えた
    3ターン目。カプ・コケコ(手前)がイベルタルの「ふいうち」を耐えた

 1ターン目。アーゴヨンの攻撃を、カプ・テテフが「きあいのタスキ(HPが満タンの時にひんしになるダメージを受けても、HP1で1度だけ耐えるどうぐ)」で耐える。カプ・テテフが反撃し、アーゴヨンをひんしに。イベルタルが登場した。

 2ターン目。砂押選手はカプ・テテフを戻し、イベルタルの持つ「あく・ひこう」の両タイプのわざを「いまひとつ」にできるカプ・コケコを場に。とくせい「エレキメイカー」で、フィールドがエレキフィールドに変わった。イベルタルの「あくのはどう」を受けるが、残りHPは約4分の3と、大きなダメージは入らなかった。

 3ターン目。イベルタルがZワザ(※)「ブラックホールイクリプス」を使うも、残りHPは約4分の1と踏みとどまる。カプ・コケコは「10まんボルト」で反撃。1発では倒せないものの、HPを大きく削り、追加効果で「まひ」状態に。

(※)Zワザ=対戦中に一度だけ使える大技。わざのタイプやポケモンに対応したどうぐ「Zクリスタル」を持てば、そのわざの威力を高めて攻撃できるほか、わざに追加効果を与えることもある。2016年11月発売の『ポケットモンスター サン・ムーン』から採用されたシステム。

 カプ・コケコの残りHPは約4分の1。イベルタルは「まひ」状態ですばやさが下がり、カプ・コケコより遅いため、イベルタルが先制わざの「ふいうち」を使うのは読める、という場面だ。

 4ターン目。砂押選手はカプ・コケコを交代させなかった。イベルタルの「ふいうち」で、カプ・コケコがひんしになると思いきや、残りHP15で耐える。そのまま「10まんボルト」で反撃し、イベルタルをひんしに。星野選手の最後の1匹はクチートが登場。

後半~「ふいうち」を防ぎつつの勝利

  • 5ターン目にカプ・テテフが登場。HPは1だが、場をサイコフィールド状態にし、「ふいうち」を使えなくする
    5ターン目にカプ・テテフが登場。HPは1だが、場をサイコフィールド状態にし、「ふいうち」を使えなくする

 5ターン目。クチートはメガシンカして「ふいうち」を使う。カプ・コケコを倒すも、後続のカプ・テテフが登場し、場が再びサイコフィールドに。メガクチートの「ふいうち」が封じられた。

 6ターン目。カプ・テテフの「サイコショック」で、メガクチートのHPが残り約3分の2に。反撃の「はたきおとす」でカプ・テテフを倒すが、最後にマンムーが登場。

 7ターン目。マンムーが「じしん」でメガクチートをひんしに。砂押選手が先に1勝した。

 「カプ・コケコがあくのはどう、Zワザ、ふいうちを耐えたのが大きかった。ここで試合の流れが大きく変わった」と砂押選手は試合後に振り返る。カプ・コケコがふいうちで倒されれば、砂押選手は素早さの関係上、イベルタルより速いマンムーを出すしかなくなり、イベルタル、クチートのふいうちの猛攻に耐えられなかっただろう。

 カプ・コケコが持っていたどうぐは「とつげきチョッキ」だ。攻撃わざしか使えなくなる代わりに、とくぼう(※)を上げる効果。イベルタルの猛攻を耐えられたのは、このどうぐによるものが大きい。想像以上の防御力に、2戦目以降のカプ・コケコの活躍に期待がかかる。

(※)とくぼう=ポケモンの6種類の能力(HP・こうげき・ぼうぎょ・とくこう・とくぼう・すばやさ)のひとつ。正式名称は「特殊防御」。ポケモンのわざは、わざのタイプとは別に、「ぶつり」と「とくしゅ」に分かれている。「とくしゅ」わざで受けるダメージは、わざを使うポケモンの「とくこう」と、わざを受けるポケモンの「とくぼう」の高さに基づいて決まる。

2戦目~「つららばり」の運に見放されて

 砂押選手はマンムーを、星野選手はイベルタルを1匹目に選択。マンムーはどうぐ「こだわりスカーフ」を持っており、同じわざしか使えなくなるが、すばやさが1.5倍になる強力などうぐだ。イベルタルは「こおり」タイプで弱点を突かれるため、一見マンムーが有利な状況。とはいえイベルタルは「ふいうち」を覚えているため、マンムーのHPを大きく削ることはできる。にらみ合いの状況だ。

前半~「運」は試合を左右するか?

  • 3ターン目。マンムー(手前)の「つららばり」が2回しか当たらず、メガクチートがぎりぎりのところで耐えた。砂押選手(左上)は苦い表情
    3ターン目。マンムー(手前)の「つららばり」が2回しか当たらず、メガクチートがぎりぎりのところで耐えた。砂押選手(左上)は苦い表情

 1ターン目。結果、両者とも控えのポケモンと交代した。星野選手はクチートを、砂押選手はカプ・コケコを場に。クチートのとくせい「いかく」は、相手の攻撃を下げる効果を持つ。マンムーには有効だが、砂押選手にかわされた形だ。一方、カプ・コケコの「とつげきチョッキ」の効果は、クチートにはあまり意味をなさない。仕切り直し、と言ったところだ。

 2ターン目。メガシンカしたクチートのHPを、カプ・コケコが「10まんボルト」で大きく削る。メガクチートは「じゃれつく」で攻撃し、カプ・コケコを一撃でひんしに。後続にマンムーが登場した。

 3ターン目。メガクチートが「ふいうち」でマンムーのHPを大きく削るも、倒すまでにはいかず、クチートの仕事はここまで……、と思われた。しかしマンムーのわざ「つららばり」が2回しか当たらず、メガクチートが耐える展開に。「つららばり」が3回以上当たればひんしになっていたが、砂押選手は運に見放されてしまった形となった。

後半~動揺を振り払えず、1対1に

  • 6ターン目で勝敗は決していた。どの時点で「詰め」を意識するかが、ポケモンバトルのコツだ。
    6ターン目で勝敗は決していた。どの時点で「詰め」を意識するかが、ポケモンバトルのコツだ。

 流れが星野選手に傾いた。4ターン目。砂押選手は、メガクチートの「ふいうち」でマンムーが倒されるのを嫌い、マンムーをジュペッタと入れ替え、「ふいうち」をかわす。

 5ターン目。メガジュペッタにメガシンカ。メガクチートの「はたきおとす」を耐え、反撃の「シャドークロー」で倒すも、3ターン目の「つららばり」で計算が大きく狂ったのを引きずるかのように、砂押選手が苦しい表情を浮かべた。メガクチートの後続に、イベルタルが登場した。

 6ターン目。メガジュペッタがわざ「みちづれ」(※)でイベルタルと共倒れに。こだわりスカーフを持ったマンムーとアーゴヨンが、ラスト1匹同士で対面した。

 7ターン目。すばやさが高いアーゴヨンが「りゅうせいぐん」をきっちり当て、星野選手が勝利。1勝1敗となり、決着は3戦目に持ち越しとなった。

(※)みちづれ=みちづれを使ったポケモンが、相手のポケモンの攻撃で「ひんし」にされると、相手のポケモンも「ひんし」にするわざ。攻撃をけん制したり、入れ替えを強制するといった使い方がある。

 砂押選手が「つららばり」ではなく「じしん」を選んでいれば、マンムーはクチートを倒せた。しかし後続に「あく・ひこう」タイプのイベルタルが出てくれば、「こだわりスカーフ」の効果で「じしん」しか使えないマンムーは、交代するしかない。「じめん」タイプのわざは、「ひこう」タイプのポケモンに、一切のダメージを与えられないからだ。

 砂押選手の控えは、「あく」タイプのわざが効果は抜群のジュペッタ。「あくのはどう」で何もできずに倒され、再度場に出たマンムーも「ふいうち」で倒される。ここまで読んで「つららばり」を選択したのだろうが、2発しか当たらなかった。「この運の悪さは……」と砂押選手は試合後に振り返っているが、痛い結果となってしまった。