カンヌ国際映画祭2018

逆転の発想の短編映画がはっきりさせたこと

  • 「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」を共同監督した佐藤雅彦教授(左から2人目)、川村元気さん(同4人目)、主演の黒木華さん(同3人目)
    「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」を共同監督した佐藤雅彦教授(左から2人目)、川村元気さん(同4人目)、主演の黒木華さん(同3人目)

 是枝裕和監督の「万引き家族」の最高賞パルムドール受賞で、大いに盛り上がった今年のカンヌ国際映画祭。感動的な授賞式のあったその日、同じレッドカーペットを歩いた日本人がいました。短編コンペティション部門に出品された「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」の共同監督の、東京芸大の佐藤雅彦教授、その研究室の卒業生で作る映像製作チーム「c-project」の関友太郎さん、豊田真之さん、平瀬謙太朗さん、映画プロデューサーの川村元気さん、そして女優の黒木華さんです。

 佐藤教授は2014年、初めてカンヌに応募した「八芳園」が短編コンペティション部門に出品され、新しい映画を探そうとしているカンヌの姿勢に大きな刺激を受けたそうです。今回の「どちらを――」は佐藤教授の著書「新しい分かり方」(中央公論新社)などに収録されたイラストを「基本コンセプト(概念)」としていて、「c-project」の「c」はカンヌ(cannes)の頭文字から取っているそうです。

 約14分の短編は、スーパーでどちらのタラコを選ぶか、旅先でどちらの住民に道を聞くかなど、冒頭からいくつかの選択肢が出現します。登場人物は、当然どちらかを選んでいるのですが、どちらを選んだかは描かれないまま、物語が進行し、「なんだ、この映画?」と思い始めた頃に、「なるほど!」と膝を打つラストシーンを迎えます。数学の概念を基にしているそうで、「テーマは手法に導かれる」(佐藤教授)という逆転の発想で作った、論理的で実験的な映画です。

  • 「新しいことをしたい人たちと関われて幸せ」と喜ぶ黒木華さん(中央)
    「新しいことをしたい人たちと関われて幸せ」と喜ぶ黒木華さん(中央)

 18日の公式上映では、他の7本の短編と一緒に上映され、大きな拍手を受けていました。セリフもほとんどない、音楽もない、ドラマチックなことは当然起こらない映画ですが、佐藤教授は上映後、「新しい緊張感をどう作るか、ということを目指していました。作った当事者ですけど、カンヌのスクリーンで観客として見た時に、この映画何かやるぞ、何か起こすぞという、目標としていたものが生まれていたかな、と思いました」と手応えを語っていました。

 川村元気さんは「映画を20本以上作ってきて、映画に飽きているところがあった。厳しいことを言うと、カンヌのコンペですら、映画って大体こういうことでしょう、みたいなところにハマっている映画が多いと思った。佐藤さんの土俵に乗って、映画を疑ういいチャンスをもらえた」と振り返っていました。

 主演は黒木華さん。どちらでもあるという状態をカメラに収めるために、俳優陣がどちらを選んだのか、監督たちは聞かないようにしていた、というこだわりよう。黒木さんは「どっちにしようかなという選択をお芝居の中でできたし、監督が5人というレア(珍しい)なケースだし、自分にとっても挑戦でした。新しいことをしたいという人たちと関われて、こんな幸せなことありません。そのご褒美としてレッドカーペットを歩けるのかな」と喜んでいました。

  • 「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」
    「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」
  • 「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」
    「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」

 日本では上映の予定がまだないそうですが、川村プロデューサーならなんとかするでしょう! 新しい映画の可能性に挑戦したこの作品。「どこで上映するかはわからないが、どこかで見た方がいいことははっきりしている」。つまらぬダジャレで、2018年のカンヌのリポートをおしまいにしたいと思います。(田中誠・写真も)

短編コンペティション部門「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」カンヌ国際映画祭公式ページ

https://www.festival-cannes.com/en/films/dochirao-erandanokawa-wakaranaiga-dochirakawo-erandakotowa-hakkirishiteiru

「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」予告編

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(c)2018『どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている』製作委員会

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