生活

「老後破産」と年金(上)…どうする月6万円の赤字

ニッセイ基礎研究所 年金研究部長 徳島勝幸

 突然だが、皆さんは将来自分がどれだけの年金を受け取れるかご存知だろうか。その年金で、月々の収支が黒字に収まるかどうか、計算したことがあるだろうか。最近多くのメディアが報じる「老後破産」を防ぐ大きな柱になるのが年金だ。老後の家計が破綻しないためにはどうすればいいのか、年金に詳しいニッセイ基礎研究所の徳島勝幸氏に、年金から考える老後破産対策について教えてもらった。

 

  • 老後の家計、破綻を防ぐには?
    老後の家計、破綻を防ぐには?

 最近、「下流老人」や「老後破産」といった言葉が、注目を集めています。やや大げさな表現という気もしなくはありませんが、現在の、そして、これからの未来での、あまり見たくない現実を私たちに突きつけているようにも思われます。

 これらの言葉が注目を集めたのには、一つに雑誌や書籍、テレビ番組等で取り上げられたこともあるのですが、年金の受給額の少なさを悲観した老人による自殺事件の報道が、より大きなインパクトを与えたように思います。そこで、今回は主に年金で備えるという観点から、老後の家計が破綻しないための取り組みについてお話しましょう。

赤字は月6万円…高齢無職世帯の生活実態

  • 図表1 高齢無職世帯の家計収支(クリックで拡大します)
    図表1 高齢無職世帯の家計収支(クリックで拡大します)

 まず、リタイアして無職となった高齢者世帯の生活実態がどのようなものか、総務省の公表している統計「家計調査報告」から見てみましょう。2014年調査の結果は、図表1のようになります。世帯主が60歳以上の無職世帯の平均では、約17万円の実収入に対して、税金や社会保険料等を除いた14万8000円弱が可処分所得です。一方、食費や住居費、光熱・水道費、教養娯楽費などの消費支出は合計で20万円を超えてしまいます。老後とはいえ交際費も必要です。諸経費が積もり積もった結果として、毎月の赤字は6万円弱になってしまうのです。

 毎月不足する約6万円を、平均的な世帯では、どのように補填(ほてん)しているのでしょうか。一般的には、過去の貯蓄などの金融資産や、不動産などの現物資産の取り崩しで帳尻を合わせています。取り崩すべき資産を持たない世帯は、どうすれば良いのでしょうか。支出を切り詰めて節約するにしても、食費や光熱・水道費の圧縮には限界があります。また、保健医療費については、大きな病気にかかれば社会保険からの給付があるとはいえ、老後世帯の家計を著しく圧迫してしまうことが必至なのです。