生活

「年収の壁」崩れる?家計直撃「配偶者控除見直し」

税理士 藤尾智之
 専業主婦もしくはパート収入がある配偶者がいる世帯の所得税を軽くする「配偶者控除」の見直しに向け、政府・与党が動き出しました。政府が最重要課題に掲げる「働き方改革」の一環として、年末までに見直しの具体案を検討する方針です。制度の見直しで暮らしはどう変わるのでしょうか? 税理士の藤尾智之さんに解説してもらいました。

無視できない恩恵「配偶者控除」

  • 配偶者控除制度の見直しで暮らしはどう変わるのでしょうか?(写真はイメージ)
    配偶者控除制度の見直しで暮らしはどう変わるのでしょうか?(写真はイメージ)

 これまで見送られ続けてきた所得税の配偶者控除の見直し。しかし、「女性の就労を阻害している」との意見から、ついに見直されることとなりました。サラリーマンの妻が働く場合、その年収には「壁」があるとされます。「壁」と呼ばれる一定の金額を超すと税金がかかるため、控除の対象となる金額以内になるよう、働き方を抑える女性が目立つからです。配偶者控除だけでなく、基礎控除についても一緒に見直すべきとの機運が高まっています。そうした中、政府の税制調査会が9月15日に開催されました。

 配偶者控除は、夫婦のどちらかの所得が年38万円以下であれば、もう片方の配偶者の所得から38万円を控除するという制度です。1961年に制度化され、今日まで続く身近な控除制度の一つです。当時の控除額は9万円で、これが生活に必要な最低限の金額と想定されていました。「もはや戦後ではない」と言われた高度経済成長時代に、忙しく働く夫を支える妻の貢献、いわゆる内助の功を認め、夫の税負担の軽減を図るものとして導入されました。95年には38万円まで拡大しましたが、その後は財政再建への配慮もあり、額は据え置かれています。

 例えば、年間の給与収入が500万円のサラリーマンが、パートで103万円の年収がある妻と二人暮らしの場合、給与所得控除額154万円、社会保険料75万円とすると、課税対象の給与所得は271万円となります。この271万円に配偶者控除と基礎控除を適用すると、所得税は97,500円、住民税は205,000円です(復興特別所得税を除いて試算)。仮に配偶者控除が廃止されると、所得税は38,000円高い135,500円、住民税は、33,000円高い238,000円となります。合わせて71,000円も納税額が増える計算です。私たちは決して、無視できない恩恵に預かっているということがお分かりいただけるでしょう。

 配偶者控除のほかに、配偶者特別控除があります。配偶者特別控除は、夫婦のどちらかの所得が38万円超76万円未満であれば、もう片方の所得から38万円~3万円を控除するという制度です。

  • 女性はもっと働くことになるのでしょうか?(写真はイメージ)
    女性はもっと働くことになるのでしょうか?(写真はイメージ)

 配偶者控除との違いは、配偶者控除の控除額が一定であるのに対し、配偶者特別控除は所得の多さに応じて控除額が逓減(ていげん)していくという点です。この配偶者特別控除が導入された理由は、配偶者控除が受けられなくなった途端に増税となるのを回避するためです。しかしながら、社会保険の加入目安となっている「130万円の壁」があるため、配偶者控除ほどは脚光を浴びていません。

 ※130万円の壁…会社員などの配偶者がパートで働く場合、年収130万円未満だと本人が年金と健康保険の保険料を納めなくて済む。