ノーベル賞

英語で読めばわかるボブ・ディランが愛される理由

東京学芸大准教授 小澤英実
 賞を受け取ると言っただけで騒ぎになった。今度は12月10日の授賞式に出るのか出ないのかで関係者をやきもきさせている。今年のノーベル文学賞に決まったミュージシャンのボブ・ディランのことである。受賞理由として、スウェーデン・アカデミーが述べたような「ホメロスやサッフォーにも比する<現代の吟遊詩人>」という評価はどこから来るのか。その答えは、彼の歌詞を英語で味わうことで浮かび上がってくるかもしれない。東京学芸大学の小澤英実准教授に寄稿してもらった。

変貌を続けるボブ・ディラン

 ボブ・ディランは公民権運動、冷戦、ベトナム戦争などで緊迫した社会情勢にあった1960年代初頭の米国で、「風に吹かれて」(Blowin’ In The Wind)や「戦争の親玉」(Masters of War)といったプロテスト・ソングを歌い、一躍、「われらの世代の代弁者」「アメリカの良心」として聴衆に熱く迎え入れられた。

 だが、60年代半ばには、早くもそのイメージを裏切るような変貌を遂げる。フォーク・ロックに「転向」した後もゴスペルに傾倒したり、歌詞にもシュールリアル(超現実)なイメージや宗教的・文学的隠喩を散りばめ、「社会派」とは違う側面を強調したりした。彼はどのジャンルの枠にもはまらない詞や歌で、聴衆の期待をいい意味で裏切り続け、現在に至っている。

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2016年11月6日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun