経済

「巨大カジノ」で日本経済は本当に良くなるのか?

静岡大学人文社会科学部教授 鳥畑与一

国内マネー「共食い」の恐怖

  • カジノが併設された韓国のホテル(江原道で)
    カジノが併設された韓国のホテル(江原道で)

 さらに、懸念されることがある。IRの収益エンジンであるカジノが燃料源を国内マネーに求めた場合、カジノの「負の効果」が「正の効果」を上回ることになるだろう。

 第1に、国内でのカニバリゼーションの発生である。カジノ誘致に成功した都市と、周辺都市の間に格差が生じる。やがて、誘致した都市の中で、IRと非関連施設の間に格差が生じる。IRのビジネス・モデルのエッセンスは、カジノの(もう)けで他部門を支えることにある。関連するホテルやレストラン、ショッピング、アトラクションの料金は割り引かれ、既存の地元ホテルやレストラン、商店は不公平な価格競争を強いられることになる。

 第2は、カジノ依存の経済財政構造が形成されることで、その地域の健全で自立的な経済発展の芽が摘まれてしまう。地方自治体財政のカジノ依存は、住民の健康と暮らしを守るべき自治体が、ギャンブルが拡大するほど税収が確保できるという矛盾した構造を抱え込むことになる。IR以外の地元経済の衰退は、IRがこければ地域がこけるという、いびつなカジノ依存の経済構造を作ってしまう。

 第3に、ギャンブル依存症拡大の社会的コストの負担が地域経済にとりわけ集中する。ギャンブル依存症の発症率は、ギャンブルの頻度や密度、賭け金額などの脳への刺激の大きさ、継続時間等に大きな影響を受けるとされる。それは、カジノ周辺の住民が依存症になる危険性が高いことを意味する。

 第4に、外国資本のカジノ企業が参入した場合、日本そのものが食われる側に立つことになる。世界最大のカジノ企業「ラスベガス・サンズ」は高収益の株主還元を誇るが、それは日本からのマネーの流出になる。


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2016年11月7日11:43 Copyright © The Yomiuri Shimbun