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「稀」な「勢」いではなかった大器晩成力士の快挙

相撲リポーター 横野レイコ
 大関稀勢の里(30)が大相撲初場所で初優勝し、横綱昇進を確実にした。日本出身の新横綱は1998年夏場所後に昇進した3代目若乃花以来19年ぶり。相撲ファンの興奮はしばらく冷めそうにない。中でも喜びをかみしめているのが、大関を10年以上にわたって見守り続けた相撲リポーターの横野レイコさん。大関のこれまでの歩みと、知られざる人柄を紹介してもらった。

右頬を伝った一粒の涙

  • 賜杯を手に笑顔を見せる稀勢の里。後列中央は父の萩原貞彦さん。隣は母の裕美子さん(2017年1月22日撮影)
    賜杯を手に笑顔を見せる稀勢の里。後列中央は父の萩原貞彦さん。隣は母の裕美子さん(2017年1月22日撮影)
  • 白鳳(右)をすくい投げで破った稀勢の里(2017年1月22日撮影)
    白鳳(右)をすくい投げで破った稀勢の里(2017年1月22日撮影)

 それはまさに、奇跡と呼ぶにふさわしい場面だった。悲願だった初優勝が決まり、NHKアナウンサーのインタビューを受ける大関稀勢の里。感無量でほとんど言葉が出ない。右の(ほほ)を伝って落ちる涙が一粒。

 ちょっとしたカメラの角度の違いで、もしかしたらその涙は放映されることはなかったかもしれない。彼がこれまで積み重ねてきた努力と、数え切れないほど味わった悔しさが、一粒の涙に昇華した一瞬をカメラは捉えた。

 稀勢の里の優勝を、私はインターネットテレビの相撲番組の中継席で見守った。多くの関係者がそうだったように、私も1差で追う横綱白鵬が初顔合わせの貴ノ岩に勝ち、優勝争いは千秋楽にもつれこむものと思っていた。これまでの白鵬の勝負強さを考えれば、ごく当然の見方だ。

 ところが、伸び盛りの貴ノ岩の鋭い寄りで白鵬が土俵を割り、あっけなく稀勢の里の優勝が決まった。モニターを通じ、館内に乱舞する座布団を目の当たりにしても、なんだか他人事(ひとごと)のようで実感が湧かなかった。

 ようやくそれが実感できたのは、稀勢の里の優勝インタビューが終わり、国技館を出た後、記者クラブにいた時だった。テレビが映し出す稀勢の里の涙を見た時、思い出が数々、脳裏によみがえり、急に胸が熱くなった。

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2017年01月23日 14時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun