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羽生結弦の発言にみるフィギュア4回転新時代

読売新聞編集委員 三宅宏

宇野昌磨は4回転フリップに成功

  • 宇野は今季、4回転フリップに成功した。独特の「クリムキン・イーグル」も魅力だ(2016年12月10日、若杉和希撮影)
    宇野は今季、4回転フリップに成功した。独特の「クリムキン・イーグル」も魅力だ(2016年12月10日、若杉和希撮影)

 「世界初とか気にしなかった。4回転ルッツを先に跳ばれているので、その下の難易度のループを跳ぼうが、別にうれしくも何ともないので。すべてのジャンプでどれだけいいジャンプを跳んでいくか、すべてのエレメンツでどれだけいいレベルを取っていけるか、ってことをしっかりやることが、僕が一番すべきこと」(16年9月29日、オータム・クラシック前日練習)

 「初めて金博洋選手(中国)の4回転ルッツを生で見たときに非常にショックを受けた。こんなに簡単に跳べるなら、ループも簡単に跳べると思ってしまった」(16年11月25日、NHK杯男子SP後記者会見)

 羽生が言うように、4回転ループは最高難度の4回転ではない。

 ジャンプには6種類の跳び方があり、4回転でいうと、基礎点の低い方から、〈1〉トウループ(10.3点)〈2〉サルコー(10.5点)〈3〉ループ(12.0点)〈4〉フリップ(12.3点)〈5〉ルッツ(13.6点)〈6〉アクセル(15.0点)の順番になる(アクセルだけは前方踏み切りのため正確には半回転多い4回転半)。

 4回転の歴史を振り返ってみよう。

 まず1988年に、カート・ブラウニング(カナダ)がトウループに成功。続いて98年にティモシー・ゲーブル(米)がサルコーを、2011年にブランドン・ムロズ(米)がルッツに成功した。サルコー、ルッツはいずれも10年以上を空けての新技開発だったが、今季は羽生のループだけでなく、宇野昌磨も史上初の4回転フリップに成功している。時代は一気に、4回転新時代に入ったといえる。

 かつては、「4回転」と言えば(書けば)、こと足りた。「4回転」とは通常、4回転トウループを指していたからだ。しかし、こう種類が増えてくると、「4回転トウループ」「4回転フリップ」などと区別しないといけない。英語表記もかつては「quad」(4個、4回の意味)で簡単に済ませていたこともあったが、現在では「quadruple toeloop」(4回転トウループ)などと丁寧に書かれている。

 ループの羽生、フリップの宇野に比べて、ルッツのムロズの知名度は圧倒的に低い。これは、ムロズは総合力で劣り、芳しい成績を残さなかったからだ。世界選手権の出場は1度だけで9位に終わっている。この点、すでに世界選手権やGPファイナルなどの表彰台に立ったことがある実力者の羽生や宇野が新技に成功したことは意味合いが違ってくる。羽生が当初ショックを受けた金博洋は完全な技術先行タイプ。羽生や宇野といった表現力にも優れた選手がルッツに次ぐ難易度の新技を身につけたことは、技術点においても金のような「高難度ジャンパー」の優位性が消えたことを意味する。

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