政治

豊洲移転問題、石原元都知事喚問を前に考えること

明大教授・元都副知事 青山 佾

ここまでの「成果」は

  • 豊洲市場で行なわれた地下水の再調査(今年2月)
    豊洲市場で行なわれた地下水の再調査(今年2月)

 また、資料と質疑を通じて、都側が交渉開始当初の時期に、「土壌Xデー」という表現により、都の環境確保条例の規制に比べ、より厳しい土壌汚染対策法が成立すると東京ガスの土地の価格は下落するという趣旨の発言をし、このときの東京ガス側の記録に、「脅かしてきた」「これ以上の交渉はムダ」といった趣旨の記載があるなど、ナマナマシイ交渉記録も明らかになった。

 ただし、これについては当時の都の担当者は否定している。

 これらが成果だとすると、刑罰を背景に資料要求や質疑を行った結果としてはやはり物足りない印象だ。この日の8時間を超える質疑を都議会のインターネット中継で視聴した都民がいたとしたら、不満が残ったかもしれない。

 10年、当時の民主党が都議会第一党だった時代に設置され、豊洲への移転案と築地での再整備案について審議した築地移転整備特別委員会では、01年以来の都と東京ガスの交渉経過をおさらいし、都も都議会も改めてシンクタンク等に調査依頼するなどの動きがあった。しかし、結局は明確な結論が出せず、両論併記的なまとめとなってしまったことがある。今回も同じように実りの少ない結果になるのだろうか。

四つの論点

 18日からは、歴代の中央卸売市場長、浜渦元副知事、石原元知事らに対する質疑が予定されている。ここで、現在までの豊洲市場移転問題をめぐる論点、疑問点を整理し、今後の百条委員会の審議による成果の見込みについても考えてみよう。

 百条委員会の論点は、スタート時点では大きく分けて、(1)移転決定に至る経緯(2)その後の東京都と東京ガスとの交渉経緯、さらには都知事選挙中から争点の一つとなっていた(3)豊洲市場の建築価格が高すぎないか、そして(4)これからどうするのか――の4点が挙げられる。

【表1=百条委員会の論点と成果の見込み】

論点 疑問点 成果の見込み
1 移転決定に至る経緯
豊洲移転決定の経緯 誰がいつ決めたのか 青島都政時代までに流れができていたことを確認するだけか
2 東京都と東京ガスとの交渉経緯
土壌汚染対策費用の分担割合の妥当性 東京ガスの負担が軽すぎるのでは 法律や条例の求める水準を超える土壌汚染対策費用を東京ガスに求めるのは無理という結論を確認するだけでは?
土地買収価格 高すぎないか、かなり早い段階で約束ができていたのでは
東京ガスとの10年の交渉で何があったのか 費用負担、売買価格をめぐって不透明
石原知事は重要な経過を承知していたのか 「報告した」「知らない」という食い違い 知事に報告したが、本人は覚えていないという結果に?
3 建築価格が高すぎないか
全体盛り土方針と建物下空洞との関係 誰がいつ決めたのか 東京都の調査結果の域は出ない?
建築契約の価格 高すぎないか 東日本大震災による建築需要急増下でやむを得ない?
4 これからどうする
築地の再整備は可能か 市場機能を維持しながら別棟への機能移転、解体、建設を計画的に行うローリング方式での建て替えが可能か 不可能との結論が出ている
豊洲の安全・安心対策は 専門家会議の見解次第 建物と土壌の安全性は別との結論が出ている
豊洲移転時期は 都議選の後まで引っ張ることが可能か そろそろ決めないわけにはいかない?

 本来なら、議論は、過去の疑問点の解明と、これからどうするか、の両方が2大論点でなければならないはずだが、現在までの審議では、過去の疑問点の解明が中心となっている。

  • 築地市場の豊洲への移転方針を発表する石原都知事(2010年10月)
    築地市場の豊洲への移転方針を発表する石原都知事(2010年10月)

 このあと予定されている石原元知事や浜渦元副知事らに対する質疑について言えば、まず、石原元知事が移転を「既定路線だった」と述べていることが、大矢元中央卸売市場長の証言との関連で「石原知事の決断だったのでは」と問いただされる可能性がある。

 ただ、言葉の問題は別として、都庁内には当時、「豊洲しかない」という大きな流れがあったこともあり、「知事の責任感」というレベルの論争の域を出ないのではないかと見ている。

 浜渦元副知事については、「水面下」交渉の意義、そして、他の証人による証言との間に齟齬(そご)がないかが焦点となるだろう。

【合わせて読みたい】
・築地市場の豊洲移転~百条委員会の証人喚問始まる
・就任100日…小池知事を待ち受ける政策課題は?
・豊洲市場移転問題…「小池劇場」舞台は都議会へ