経済

「ヤマトvsアマゾン」宅配危機に見た業界の隘路

物流ウィークリー編集長 小西克弥

低賃金の中高年が支える

 国土交通省などの調べでは、貨物自動車運送事業者の数は2015年3月末現在、約6万3000社。1990年(約4万社)より4割近く増加している。車両数も約105万台から約136万台に増えているのだが、ドライバーの数は約83万人にとどまっている。

 事業者数が増えて競争が激化したことで、荷物運賃の水準は低下。それに伴ってトラックドライバーの賃金水準も下がっていった。これに「若者のクルマ離れ」といったマイナス要因が重なって、深刻なドライバー不足を引き起こしているのだ。

 厚生労働省の調査によると、運送事業に従事する人の平均月給は、99年には約33万7000円だったが、14年には約29万4000円にまで減少している。この数字は、全産業平均より約2万円低い。また、運送業に従事する人の年代別の割合で見ると、40代以上が05年の56.0%から15年には70.8%に増加。とりわけ60代以上は9.6%から15.1%に上昇している。運送業界は「低賃金の中高年ドライバー」によって支えられていると言っていい。

ヤマト運輸が対策に踏み切る

 かつては年末や年度末などの繁忙期、運送事業者の駐車場に行ってみると、トラックはみな出払っていて、駐車中の車両を目にすることは少なかった。ところが、今は少し違う。トラックがずらりと並んでいる光景を目にする機会が増えた。「仕事はあってトラックもある。しかし、ドライバーがいない」。東京都内のある運送会社の経営者がそう話す。

  • ヤマト運輸では、人手不足に対応するため、主婦のパートを積極採用
    ヤマト運輸では、人手不足に対応するため、主婦のパートを積極採用

 このように、ドライバー不足のために車両を駐車場や車庫に並べておくしかないという運送事業者が増えているのだ。「周辺の事業者に仕事を回そうとしても、どこも同じ状況だから、荷物を運ぶに運べない」と、この経営者は嘆く。

 ハローワークで仕事を探す人1人当たり何件の求人があるかを示す有効求人倍率(17年1月、原数値)を見ると、運送業を含む「自動車運転の職業」は2.68倍。全職業の平均(1.36倍)を上回り、十分な人手を確保するのが難しい状況であることがわかる。

 人手不足は、真綿で首を絞めるように運送事業者を追い詰め、業界全体に不穏な空気がまん延していた。そうした中で先般、宅配最大手・ヤマト運輸の労働組合が荷物の引受量の抑制などを経営側に要望し、経営側も27年ぶりの運賃値上げに踏み切ると報じられたことで、問題が顕在化した格好だ。

 ヤマト運輸のある労組関係者も「人材不足がネックになっていた」と認める。別の関係者は「いずれこのような時期が来るとは思っていた。宅配事業は特にドライバーに負担がかかり過ぎていた」と打ち明ける。

 ただでさえ宅配ドライバーの人手不足が進んでいたところに、ネット通販の取り扱い荷物が急増し、ドライバーは休憩時間が取れなかったり、夜間の再配達などで長時間労働を強いられたりといったことが常態化していた。今後、ヤマトが対策を講じることで、ドライバーの負担は軽減されるだろうが、この関係者は「『長時間労働が減った分、給与を減額された』という声が出てくるのでは」と懸念する。

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