経済

「ヤマトvsアマゾン」宅配危機に見た業界の隘路

物流ウィークリー編集長 小西克弥

鉄道輸送などに変更する「モーダルシフト」

 限界に達した宅配サービスのあり方をどう見直すかは、今や社会問題となりつつある。こうした中、トラック輸送から鉄道や海運による輸送に変更する「モーダルシフト」の必要性を訴え続けているのが、陸・海・空の物流事業者で組織する「日本物流団体連合会(物流連)」だ。

  • 「トラックはあるが、ドライバーがいない」状況の運送事業者も(写真はイメージ)
    「トラックはあるが、ドライバーがいない」状況の運送事業者も(写真はイメージ)

 鉄道や船舶での輸送であれば、少ない人手で大量の荷物を運ぶことができる。実際、商品配送などをトラックから切り替える企業も増え始めている。政府も、モーダルシフトに取り組む企業を税制や補助金で支援するなどの後押しをしている。

 しかし、鉄道や船舶だと、輸送時間や輸送頻度でトラックのように融通が利かないほか、荷物の積み替えができる場所が限定されるといった難点がある。さらに、モーダルシフトでカバーできないのが「ラスト1マイル」。鉄道を使ってある駅から目的地の駅まで荷物を運んだとする。そこから最終的に荷受人に手渡すためには、1マイル(約1.6キロ・メートル)ほどの短い距離だとしても、結局はトラック輸送を使わなくてはいけない。

 国内の配送システムは現在、宅配事業にかかわらず、時間指定が当たり前となっている。物流連は「その『当たり前』を崩さなければならない。このままだと物流システムの人材不足は避けようがない。もっと時間指定に幅を持たせなければ、国内の物流システムは破綻してしまう」と警鐘を鳴らす。

 鉄道輸送や海上輸送では、トラック輸送のように全国的なきめ細かい配送網を張り巡らすことはできない。だから、現在のように配達時間帯が細かく区分されていると、指定通りに配達できないケースも出てくる。そういったことを消費者に理解してもらわなければ、モーダルシフトは普及しないというのだ。

「物流コストはタダ」の意識

 ここまで宅配サービスが普及すると、消費者に「意識の変化」を促すのは容易ではない。ネット通販では「送料無料」が当たり前だ。当然ながら、実際には無料ではなく、その商品の価格に送料が含まれている。ところが、ネット通販側は「送料無料」と明記しないと、その商品は売れ行きがなかなか伸びないのだという。

 「送料無料」が当たり前だったのに、いきなり「送料・運賃がかかります」と言われても、消費者は簡単には納得しないだろう。運送業界は、通販会社がこのままホームページなどに「送料無料」と掲げ続けることで、消費者に「物流コストはタダ」という意識が根付き、運賃がさらに下落する要因となりかねないと危惧している。消費者の意識を変えるため、運送事業者の多くは「通販会社は『送料無料』ではなく、『送料は弊社負担』に表記を変更できないのか」と考えている。実際に通販各社に要望している運送事業者もいるのだが、通販側がなかなか応じないのが実情だという。

 それだけに、ヤマト運輸が運賃値上げに踏み込んだことは、業界にとっても大きな意味を持つ。宅配事業を行っていない中小の運送事業者からも「大手が率先して運賃値上げに動いてくれなければ、中小・零細事業者は何もできない」「遅すぎたくらいだ。宅配事業が専門外の事業者から見ても、現在の宅配サービスは過剰だ」などと賛同の声が上がっている。

 運送業界の人材不足を解消するには、運賃の底上げ、そしてドライバーの賃金の底上げは絶対に必要だ。しかし、アマゾンジャパンをはじめとするネット通販大手が価格交渉力を強めるなかで、中小・零細の事業者を含むすべての運送事業者が値上げできるかどうかは、疑問が残る。

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