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誤算続き? 豪腕ドゥテルテ大統領が直面する試練

住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
 「麻薬と犯罪を半年で撲滅する」――。そう豪語して昨年6月に就任したフィリピンのドゥテルテ大統領が苦境に立たされている。抵抗する容疑者の殺害も辞さないという過激な手法で「麻薬戦争」に臨んでいるが、終結の兆しは見られず、犠牲者の数は8000人にも上っている。対中国外交も楽観視できる状況にない。ドゥテルテ氏はこの難局にどう対処していくのか。住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんが最新情勢を報告する。

麻薬戦争…国民の評価と人権団体の懸念

  • フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(ロイター)
    フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(ロイター)

 「アジアのトランプ」ともいわれる大胆不敵な言動と強いリーダーシップでフィリピンを率いてきたドゥテルテ大統領だが、就任から8か月余りがたち、様々なところで困難に直面するようになった。

 最大の課題は、「麻薬戦争」の終結に至る道筋が見えないことである。

 ドゥテルテ大統領は、薬物犯罪の撲滅を最重要課題に掲げ、政権発足直後に「麻薬戦争」の開始を宣言した。容疑者の殺害を容認するかのような大胆な手法によって、長年フィリピンを(むしば)んできた薬物犯罪の撲滅に乗り出したのである。

 政権発足から100日間で70万人以上の容疑者が摘発を恐れて出頭し、これまでの年間量に相当する80億ペソ(約180億円)相当の薬物が押収されるなど、薬物対策は一定の成果を上げた。国民の支持も高く、昨年12月に行われた世論調査によれば、調査に答えた人のうち、85%がドゥテルテ政権の薬物対策に満足し、88%が麻薬問題は改善されたと感じている。

 一方で、麻薬戦争は、8000人にも上る死者を生み出した。うち5000人は警察官以外の「自警団」により殺害されたといわれる。法の支配をないがしろにするかのような事態に対し、国内外のメディアや国連、欧米諸国、人権団体は厳しい非難の声を浴びせた。

 今年3月には国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが超法規的殺人への警察の関与疑惑を問題視する報告書を発表した。米国務省も2016年版「人権報告書」の中で超法規的殺人の急増に懸念を表明している。

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2017年3月23日10:39 Copyright © The Yomiuri Shimbun