国際

移民排除はありえないオランダ社会の成熟度

京都外国語大学非常勤講師 前川愛
 オランダで3月15日に投開票された下院選(定数150)は日本でも注目を集めた。イスラム系移民の排斥と反EU(欧州連合)を掲げる右派・自由党の躍進が予想され、報道にも熱が入ったからである。結果は、マルク・ルッテ現首相が所属する自由民主党が議席を減らしながらも第1党の座を守り、自由党は第2党にとどまった。だが、そもそも今のオランダ社会でイスラム系移民の排除が選択肢になり得るのだろうか。オランダ在住の京都外国語大学非常勤講師、前川愛さんが「内側から見たオランダ」をリポートする。

「自由党躍進」の予想に不安感

  • 自由党のウィルダース党首(ロイター)
    自由党のウィルダース党首(ロイター)

 オランダ下院選の投票前、日本のメディアで極右が躍進かと報道され、不安をかき立てられた。英国がEU離脱を決め、米国にはトランプ大統領が誕生。各国でポピュリズムが勢いを増す中、オランダでもヘルト・ウィルダース氏率いる自由党が、事前の世論調査で一時は第1党になる勢いを見せていたからだ。

 同時に、こうした報道には大きな違和感を覚えた。オランダ人と結婚し、オランダに住んでいる私は、「婚姻による呼び寄せ移民」ということになる。周囲を見るとアジア系、中東系、東欧系、アフリカ系と移民の多様さに圧倒されている。中年のアジア系移民として生活している身としては、人種差別の実感も薄い。

 今回の選挙について周囲の人に尋ねると、「自由党の議席をできるだけ増やさないこと」が主な関心事だった。この状況でいったいどのような人が自由党を支持するのか。彼らのリアルな姿とはどのようなものか、改めて考えてみた。

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2017年3月28日11:14 Copyright © The Yomiuri Shimbun