経済

大型買収で攻める「新薬不足」武田薬品の焦燥

ジャーナリスト 村上和巳
 国内製薬トップの武田薬品工業が、がん治療薬に強みを持つ米製薬会社を約54億ドル(約6200億円)の巨費で買収するなど「攻めの経営」を加速させている。だが、その背景には、事業規模などで欧米に水をあけられた国内製薬業界の切実な事情がある。武田薬品の戦略や製薬業界の内実について、業界に詳しいジャーナリストの村上和巳氏が解説する。

「尻に火が付いた」結果の戦略

  • 武田薬品工業は、大型買収や創薬ベンチャー設立などの新戦略を矢継ぎ早に打ち出している
    武田薬品工業は、大型買収や創薬ベンチャー設立などの新戦略を矢継ぎ早に打ち出している

 2017年に入り、国内製薬業界は、買収、提携、社長交代などのニュースでにぎわいを見せている。その「震源」と言えるのが、国内製薬業界のガリバー・武田薬品工業だ。同社は新年早々の1月9日、がん治療薬を手掛ける米バイオベンチャー「アリアド・ファーマシューティカルズ」社(マサチューセッツ州)を約54億ドルで買収すると発表。さらに3月14日には、産業革新機構と医薬品卸のメディパルホールディングス(本社・東京都中央区)との共同出資で、創薬ベンチャー「スコヒアファーマ」を設立したと発表した。

 武田は昨春にも、新薬の特許失効後に発売され、価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の世界最大手「テバ・ファーマシューティカル・インダストリーズ」(イスラエル)との合弁会社「武田テバファーマ」(本社・名古屋市)を設立している。

 こうした武田の一連の大型買収、提携などは、海外の大手製薬会社も同様の動きを見せており、攻めの戦略にも見える。だが、こと国内の製薬会社に関しては、これは「尻に火が付いた」結果に過ぎないのだ。

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