国際

シリア内戦、もう一つの危機

ユニセフ・アジア親善大使 アグネス・チャン

児童労働と児童婚

  • ヨルダン・ザルカの市街地に設けられたマカニセンターで、児童婚の末、3か月前に離婚した女性から話を聞くアグネス・チャン氏(c)日本ユニセフ協会/2017/S.taura
    ヨルダン・ザルカの市街地に設けられたマカニセンターで、児童婚の末、3か月前に離婚した女性から話を聞くアグネス・チャン氏(c)日本ユニセフ協会/2017/S.taura

 キャンプの中の難民はどうやって生活をしているのでしょうか。まず、お金がいります。でも、難民の就労は原則、認められていません。代わりに国からお金が支給されます。ヨルダンの場合、貧困であることが証明できれば、1人あたり1か月28ドル、だいたい3000円です。7人家族だと2万1000円ぐらい。でも、これでは生活できません。

不法でも大人は働けます。でも、もしつかまったら、刑務所に入れられたり、国外に出されたりしてしまう。それは大きなリスクです。だけど、子供はつかまっても目をつぶってもらえるようです。そこで何が起きたかというと、児童労働です。学校の先生に聞くと、自分が教えているシリア難民の「50%は働いていると思う」と話していました。

 男の子は働けますが、アラブ社会ですから女の子はなかなか働くことができません。女の子は結婚させられます。児童婚ですね。早い子は12歳ぐらい。多くの女の子は15歳ぐらいで結婚させられます。シリアで早く結婚するケースは結構あったのですが、もともと18%、地域によっては13%ぐらいだった児童婚がこの戦争で40%ぐらいになりました。

 結婚する時、お嫁さんの家は結納金がもらえます。もともとの相場は3000ドル、30万円ぐらいです。今は緊急事態ですから、3000ドルを払わない人もたくさんいます。お嫁さんをもらう側からすれば、安い金額でもらえるので、「もう1人もらおうかな」となる。向こうは(一夫多妻で)4人まで合法です。また、お嫁さんを送り出す家は、ご飯を食べる人が1人減るので助かるという事情もあります。

誰にも言えない片思い

 児童婚で結婚させられた女の子は、精神的にも肉体的にもまだ成熟していません。すぐに母親になったり、大きな責任を負わされたりするにはふさわしくない年齢なのです。もう一つ残念なのは、本来、学校に行っている年齢だということです。結婚したら学校に通うことはできません。家のことや、だんなの世話をしなければならないからです。そうすると教育を受けることができません。

 ユニセフがこの問題を理解してもらおうと、女の子たちのグループを作りました。私はそのグループの中に入って彼女たちの本音を聞きました。アラブ社会では女の子一人では何もできない。親が決めたら、もうお嫁に行くしかない。だけど、中には「NOと言います」という子もいました。学校に行きたいという子は多かったですね。

 「好きな人と結婚したい。でも、それを言ったら私は追い出されます」とか、秘めた思いはいっぱいあります。1人の女の子が片思いをしているらしいけれど、だれにも言えない。女の子ばかりのグループだったから、みんな、「キャー」とか「ワーッ」とか言うけど、実際は何もできない。恋愛結婚は、ほぼ許されないという世界です。

 何歳までにお嫁に行かされると思うか聞いてみると、16歳とか17歳という答えが返ってきました。19歳、20歳では、もう遅いというんですね。ほぼ中卒(の年齢)で結婚するということです。中には大学に行きたいという子もいたので、自分の夢と現実とのギャップはすごく大きいと思います。

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2017年4月20日10:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun