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「年上の妻」だけでは語れないマクロン氏の横顔

在英ジャーナリスト 小林恭子
 奥さんは25歳年上、金融界では企業の合併などで成功を収め、わずか39歳でフランス大統領に……。華やかな経歴の階段を駆け上がってきたフランスの次期大統領、エマニュエル・マクロン氏の横顔に注目が集まっている。政治経験はほとんどなく、中道の政治運動「前進」を昨年発足させたばかりで、大統領選を勝ち抜いた。14日に就任するマクロン氏とは、一体どんな人物なのか。在英ジャーナリストの小林恭子さんに寄稿してもらった。

祖母から受けた大きな影響

 マクロン氏のこれまでの人生を振り返ると、2人の女性の存在が重要な役割を果たしている。

 フランス北部アミアン生まれのマクロン氏は、3人きょうだいの長男だ。父はピカルディ大学の神経学の教授、母は小児科医。典型的なブルジョワジー(中産階級)の家庭で、自宅は労働者階級が住む赤レンガの住宅や工場が立ち並ぶ地域ではなく、洗練された通りに面したところにあった。

 宗教色の強い家庭ではなかったが、マクロン氏は12歳で自らカトリック教徒として洗礼を受けている。

 学校帰りや週末に入り浸っていたのが、母方の祖母ジャルメンヌさんのアパートだ。ジャルメンヌさんの母は清掃人として働き、読み書きができなかった。その姿を見て育ったジャルメンヌさんは教育の必要性を身にしみて感じるようになった。自身は地元の学校の校長にまでなり、孫のマクロン氏にも何とか自分が学んだことを伝えようとしたようだ。

 マクロン少年が来るとクラシック音楽を流し、声を出して本を読ませた。マクロン氏は「ホットチョコレートを飲みながら、ショパンの音楽をよく聞いたよ」と当時を振り返っている。

 祖母を通じて古典文学や音楽に親しんだマクロン氏。当時の同級生はマクロン氏が教室の中で自作の詩を読み上げたことを覚えているという。

 しかし、祖母はマクロン氏に単に文学や音楽に親しむことを教えただけではなかった。マクロン氏の自伝を書いたフランソワ=ザビエ・ブルマー氏によると、祖母は社会をより良い方向に変えるべきだとの信念の持ち主で、マクロン氏が後に政治の大切さに目覚める種をまいたという。

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2017年5月11日12:23 Copyright © The Yomiuri Shimbun