経済

パソコン市場に「復活」の足音?

BCN総研チーフエグゼクティブアナリスト 道越 一郎

「情報を作るマシン」アピールを

 よく、PCは情報「生産」、スマホは情報「消費」に向いているといわれる。しかし、メーカーや量販店は、PCが得意とする情報生産型の使い方の提案ができていない。文章を書いたり写真を加工したり、曲を作ったり絵を描いたり、プログラミングをしたり……。今のパソコンは何でもできる万能のツールといえるが、消費者は自分でモノを作る楽しさを知らないまま、どんどん情報消費一辺倒の「スマホだけの生活」へと流れてしまっている。特に、その傾向は小さなころからスマホになじんできた若年層に強い。

 3月に独立行政法人・国立青少年教育振興機構が発表した調査結果によると、日本、米国、中国、韓国のそれぞれの国の高校生が、学習にどの程度ICT(情報通信技術)を使っているかについて比較したところ、多くの項目で日本が最下位というショッキングな事実が明らかになった。

  • 2020年度には日本でも小学校でプログラミングが必修化される(写真はイメージです)
    2020年度には日本でも小学校でプログラミングが必修化される(写真はイメージです)

 プログラミングはもちろん、MSの「Word(ワード)」のような文書作成ソフト、「Power Point(パワーポイント)」などのプレゼンテーションソフト、「Excel(エクセル)」に代表される表計算ソフトなどを使う頻度がいずれもきわめて低かった。PCを使った経験がほとんどないまま就職してしまい、配属された職場で当たり前のようにPCが使われていることに戸惑う人さえいるという。

 だが、これは氷山の一角ではないか。若者に限らず、多くの日本人も同じような傾向に陥っていると筆者は考えている。日本人のITリテラシー(活用能力)は決して高くなく、むしろ先進国ではかなり低いといわれる。

 PCを買ったはいいけど何もしない、何もできない。「宝の持ち腐れ」になったままの状況では、本格的な市場の回復が見込めないどころか、人材のレベルが下がり、ひいては国力の低下につながりかねない。

 前出のビックカメラの売り場責任者も「(20年度から)プログラミング教育が小学校で必修化されるので、それに合わせて売り場展開なども変えていきたい」と話す。「情報を作り出すマシン」であるPCの価値を改めてアピールして、メーカーや量販店が新しい製品や用途を提案し続けることが、市場を活性化させるとともに、日本人のITリテラシーを向上させるためのカギだ。PC市場が回復に向けて動き出した今こそ、苦境を脱する「好機」といえるのではないだろうか。

【あわせて読みたい】
・ソニーが売却したVAIO、「V字回復」のワケ
・復調?白物家電 消費者の心をとらえたシロモノ
・日本市場に熱を吹き込む英ダイソンの新戦略
・ZOZOやメルカリにみるネット商取引の危うさ
・ヒット商品続々・シャーペンはどこまで進化したか

プロフィル
道越 一郎(みちこし・いちろう)
 早稲田大学法学部卒。1989年、日本リサーチセンター入社。マーケティング研究本部で雑誌・書籍の編集を担当。その後ネット調査事業の立ち上げに参画、Web視聴率分析なども担当。2005年にBCN入社。PC・デジタル家電ランキングサイト「BCNランキング」編集長などを経て、ランキングデータを用いた市場分析を行うアナリストとしても活動。15年1月より現職。デジタル家電の販売データ分析を元にした情報発信を行う。得意分野は黒物家電。