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なぜ会社の研修は役に立たないと言われるのか?

人材・組織開発コンサルタント 真田茂人

「知っている」のに「できないこと」を知る

 「知っていること」≠「やっていること」 

 私は研修の場で、「知っていること」と「やっていること」は必ずしも一致していないと伝えています。

 研修が必要となるのは、たとえ知っていても、できないことがあるためです。たとえば、課題図書を配ったり、eラーニングを活用したりして、知識を得ることはできます。多くの人が「知る」ことはできるのですが、実は、ここから先が難しいのです。

 〈1〉知る、〈2〉わかる、〈3〉やってみる、〈4〉時々できる、〈5〉常にできる――。「知っていること」=「やっていること」になるプロセスには、五つものステップがあるのです。そして、そこにはいくつもの難所があり、失敗することもあれば、応用が求められることもあります(図)。

 ですから、実は自分が「やっていない」「できていない」ことに気づくことが出発点なのです。そうでなければ、誰も努力しないからです。

【講師ができる対策】質問を変えて聞く

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 実際の研修を例に紹介しましょう。

 「自律型人材の育成研修」での一場面です。受講者に「部下を叱ってばかりでなく、上手にほめていますか?」と質問します。

 「はい、もちろん」

 「そういうふうに心がけて接しています」

 こういう回答が返ってくるでしょう。これでは、課題を見つけることはできません。

 そこで、質問を変えてみましょう。

 「部下の育成で困っていることはないですか?」

 「難しいことはないですか?」

 「もっとこうなったら良いと思うことはありませんか?」

 こう聞かれると、「何もないです」ときっぱりと答えられる人はいません。こういう質問を投げかけることで、受講者は「できていないこと」に気づくのです。

 これを研修前に事前課題として出しておくと良いでしょう。

 それが難しい時には、研修当日の冒頭に考えてもらうのです。

研修を受ける「目的」とは?

 受講者へ次に問いかけることは、「この研修で手に入れたいことは何ですか」です。

 この質問は、大変効果があります。

 多くの受講者は、研修が好きではありません。会社の指示で仕方なく参加している人がほとんどでしょう。

 そのため、研修の「目的」についての意識を持っていません。

もちろん、事務局には「目的」があるでしょう。でも、ここで言う「目的」とは、受講者にとってのものです。

 「目的」を持っていない受講者は、頭にアンテナが立っていない状態です。せっかく有益な情報が研修会場に飛び交っていたとしても、それらをキャッチすることができません。

 「この研修で手に入れたいこと」を認識することこそが、受講者にとっての「目的」であり、必要なアンテナなのです。これによって、有意義な情報をキャッチできるようになります。

 研修が役に立たないと言われるのは、もう一つ理由があります。

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