スポーツ

書いて取った五輪メダル!松田丈志を鍛えた言葉の力

元競泳選手、五輪メダリスト 松田丈志
 最近、この人をテレビなどでよく見かける。松田 ( たけ ) ( ) さん、32歳。元競泳選手だ。北京、ロンドン、リオの五輪で3大会連続のメダルを獲得し、昨年秋に競技生活を引退した。今は鋼の肉体をスーツに包み、「伝える仕事」に取り組んでいる。近く、日本オリンピック委員会(JOC)が新設する「アスリート委員会」の委員に就任することも決まった。子どもの頃から「言葉の力」を武器にレベルアップを続けてきたアスリートが、引退後も「書くこと、伝えること」にこだわる理由を明かした。(聞き手・メディア局編集部 久保田稔)


「言葉には力がある」

  • 松田丈志さん(高梨義之撮影)
    松田丈志さん(高梨義之撮影)

 「銅メダルとれてよかった。レースは決勝タイム上げれずくやしかった。最後まで100%満足のレースというのはできなかったが、それが水泳の道、極め道なんだと思う」

 私にとって、最後のオリンピックとなったリオ五輪のレース(男子800メートルリレー決勝)後、練習ノートに書いた文です。その時の素直な気持ちが出ていると思います。


  • 松田さんの練習ノート。レースやウォーミングアップの内容、体調・食欲などの自己評価とともに感想が書かれている
    松田さんの練習ノート。レースやウォーミングアップの内容、体調・食欲などの自己評価とともに感想が書かれている

 松田さんは1984年、宮崎県延岡市に生まれ、4歳の時に水泳を始めた。学校のプールにビニールハウスをかぶせただけの施設で、オリンピックを目指して久世由美子コーチと特訓を重ねたエピソードは有名だ。しかし、その陰で、師弟は「もう一つの努力」をしていた。毎日の練習内容や感想、反省などをノートに記すという地道な努力だ。松田さんはそれを、現役引退の日まで続けた。

 「強くなりたいなら、自分の状態を記録し続けなさい」。久世コーチにそう言われて、練習後にノートをつけ始めたのは中学生の時でした。その日の練習メニューやタイムなどを記録したり、トレーニングの感想や反省などを書いたりしていました。

 泳ぎながら気づいたこと、考えたことなどを文にまとめました。なぜ良いタイムが出たのか、なぜ悪かったのか――。一生懸命考え、言葉を選ぶうちに、頭の中が整理され、課題がはっきりと浮かんで来る気がしました。「言葉には力がある」と信じるようになりました。

 水泳に限らず、なんとなくやっていても上達はしません。自分を見つめ、その時点での限界を正しく認識した上で、さらに上へとプッシュ(押し上げ)して行かなければ、成長にはつながらないと思います。

 私は書くことで、自分と向き合っていました。苦しい時や不安になった時などに、過去に書いたものを見て、「これだけやってきたんだから大丈夫」と自信を取り戻したこともありました。私にとって練習ノートは、オリンピックという目標に向かうために欠かせないものになりました。

【あわせて読みたい】
・成功体験をさせよ…斎藤巨人二軍監督の若手指導法
・「球が遅く見える」…主将で主砲、早実・清宮の春
・崖っぷちも、開幕投手も…「松坂世代」のいま
・早期スポーツエリート教育は「悪」か