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中国「一帯一路」会議から見えてきたもの

住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
 中国の 習近平 ( シージンピン ) 政権が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマとする国際協力会議が5月14、15の両日、北京で開かれた。「一帯一路」構想には不明な点も多く、米国に代わって中国が国際秩序を構築しようとする動きには警戒感も強いが、会議には多くの国々が参加し、米国も直前になって代表派遣を決めた。こうした動きから見えてくるものは何か。住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんに寄稿してもらった。

「一帯一路」、初の国際協力会議

  • 北京で開かれた「一帯一路」をテーマとする国際会議。演説する習近平国家主席の姿が会場のスクリーンに映された(5月14日)=AP
    北京で開かれた「一帯一路」をテーマとする国際会議。演説する習近平国家主席の姿が会場のスクリーンに映された(5月14日)=AP

 「一帯一路」国際協力会議には、約130の国から合わせて1500人が参加した。ロシアやイタリア、フィリピンなど29か国は首脳が出席した。

 「一帯一路」は2013年に習主席が自ら提唱した。欧州とアジアに陸路「シルクロード経済ベルト」(一帯)と海路「21世紀の海上シルクロード」(一路)からなる巨大な経済圏の構築を目指す野心的なプロジェクトだ。提唱から4年、首脳も参加する国際会議が開かれたのは今回が初めてである。

 中国には、「一帯一路」を通じて、米国と並び立つ超大国として、自らの主導で国際秩序を作る狙いがあると見られている。対応が注目されていた米国は、会議の直前になってマシュー・ポッティンジャー国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長の派遣を決めた。

 トランプ政権は、北朝鮮情勢が切迫する中、4月に行われた初の米中首脳会談以降、中国に対する敵対的な姿勢を和らげつつあるが、今回の決定も、そうした協調路線に沿ったものと理解できる。

 もっとも、ポッティンジャー氏は官庁の局長レベルであり、首脳が出席したロシアや東南アジアの国々はもちろん、閣僚を派遣した英独、松村経産副大臣を派遣した日本と比べても、代表団の格は大きく落ちる。習主席に配慮しつつも、全面的なサポートは控えるという、米国の慎重な姿勢が読み取れる。

  • 米国は「一帯一路」会議にマシュー・ポッティンジャー国家安全保障会議アジア上級部長(中央)を派遣した(ロイター)
    米国は「一帯一路」会議にマシュー・ポッティンジャー国家安全保障会議アジア上級部長(中央)を派遣した(ロイター)

 習主席は会議の基調講演で、対象地域への累積投資が500億ドル(約5兆5000億円)に上るという成果を強調したほか、構想を支える「シルクロード基金」に1000億元(約1兆6000億円)の追加出資、国営金融機関による3800億元(約6兆800億円)の融資、対象国に今後3年間で600億元(約9600億円)の援助を行うといった方針を次々に発表。最終日に採択された共同声明では、「保護主義への反対」を表明するなど、会議の成果を華々しく強調した。

 秋に共産党大会を控える習主席にとって、今回の会議を成功させ、自らの威信を高めることは最重要課題だった。トランプ政権の発足や欧州でのポピュリズムの台頭により世界的に保護主義の機運が高まる中、中国が新たなグローバル化の担い手になることを演出した。習主席が得たものは大きかったといえるだろう。

 では、「一帯一路」の実像はどうなっているのか。そこには様々な問題がある。

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