スポーツ

「脱走常習」の高安を大関昇進に導いたひと

相撲リポーター 横野レイコ
 大相撲の高安が、大関昇進を決めた。新十両、新入幕、新三役といずれも「平成生まれ初」の力士として注目を浴びながら、その後は足踏みが続き、初土俵から12年でついに大関の座を射止めた。そんな高安の素顔を、密着取材を続けてきた相撲リポーターの横野レイコさんが紹介する。

先代親方の教えを口上に

  • 大関昇進の伝達式を終え、ガッツポーズをする高安(5月31日)
    大関昇進の伝達式を終え、ガッツポーズをする高安(5月31日)

 5月31日朝、都内のホテルで行われた高安の大関昇進伝達式。日本相撲協会からの使者を迎えた高安は、やや緊張した面持ちながら、「正々堂々、精進します」と力強く口上を述べた。その後、フジテレビの夕方のニュース番組に生出演。高安に同行していた筆者は、出演を終えた高安が「せっかくだから、フジテレビを探検しようかな」と言ってくれたので、一緒に同社内を回った。

 いくらテレビ局とはいえ、その日の朝から大きな話題になっている“時の人”がまさか突然、目の前に現れるとは思わず、みんなビックリ。高安の行く先々で歓声と拍手が湧き起こり、写真攻めに遭った。それでも高安は嫌な顔一つせず、知り合いの社員の机を見て「まあ、奇麗にしてますね」と軽口をたたいたりして、周囲の人たちを笑わせた。そんな高安の気さくな人柄に、居合わせた一同が大ファンになったことは言うまでもない。相撲ファンの間でも高安は「神対応の関取」として有名なのだが、ここでもその一端を見せてくれた。

 彼の性格は、入門以来、国技館に駆け付けて息子を応援し続け、勝つと体全体で喜びを表現する陽気なフィリピン出身の母・ビビリタさんと、厳格で物静か、少し恥ずかしがり屋の父・栄二さんの双方から受け継いだものだろう。

 伝達式での口上に選んだ言葉は、先代師匠の故・鳴戸親方(元横綱・隆の里)の教えをもとに高安自身が考え、選んだものだ。「『力士たる者、勝っても負けても表情を表に出してはいけない。土俵の上では堂々としていなさい』と先代から常々言われてきましたから。勝っても負けても常に正々堂々とした相撲を取り切ろうと心がけて、この12年間、土俵に上がってきた。そんな自分の気持ちを正直に伝えたいと、大関に上がる覚悟をこめて一番好きな言葉を選びました」と言って、高安は胸を張った。

【あわせて読みたい】
宇良、石浦…小兵力士が土俵を盛り上げる!
痛みに耐えて頑張った!稀勢の里が歩む名横綱の道
書いて取った五輪メダル!松田丈志を鍛えた言葉の力