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働き方 日産「ゴーン改革」から学ぶべきポイント

読売新聞調査研究本部主任研究員 榊原智子

製造ラインを人間工学の視点で改革

 こうした日産の挑戦を、社外の専門家はどのように評価しているのだろうか。

 「日産でユニークなのは、人間工学を駆使した取り組みだ」。そう指摘するのは、女性活用やダイバーシティー経営の研究を行ってきた米国の著名なNPO、カタリストの日本法人、カタリスト・ジャパン(東京)のバイスプレジデント、塚原月子さんだ。

 「工場の組み立てラインのような女性の管理職が生まれにくい職場でも、すべてのラインや機械を平均的な女性の力で扱えるように見直した。その結果、女性だけでなく小柄な男性やすべての人に働きやすい職場に変わった。工場のラインマネジャーのほか、営業最前線のカーライフアドバイザーなど、以前は女性の少なかった職場でも管理職ポストで活躍する道が広げられた」

  • 2008年4月に「カタリスト・アワード」をニューヨークで授与されたゴーン氏(右から2人目)と、カタリストCEO(当時)のアイリーン・ラング氏(同3人目)
    2008年4月に「カタリスト・アワード」をニューヨークで授与されたゴーン氏(右から2人目)と、カタリストCEO(当時)のアイリーン・ラング氏(同3人目)

 米国にあるカタリストの本部は、女性のキャリア向上で模範的な経営を行う世界各国の企業を毎年表彰している。08年に最高賞「カタリスト・アワード」を日本企業で初めて授与されたのが日産だった。

 同賞の選考は厳格で、ダイバーシティー経営の「戦略と合理性」「経営幹部の取り組み」「社員の参画」などを独自の基準で検証する。1年がかりの調査では、経営陣のみならず、現場従業員らの聞き取りも行う。その結果、日産はダイバーシティーの考え方が全社的に浸透していることが確認できたという。同賞に応募する日本企業は少なくないが、日産以外の日本企業はまだ受賞していない。

 ゴーン氏の取り組みは「本気度が違った」と塚原さんは語る。ビジネス上のメリットを客観的に判断し、女性が活躍できる環境整備を成長への投資と位置づける。「女性の関与やダイバーシティーを拡大することは、財務成績を上げていくうえで不可欠だ、とゴーン氏は断言していた。こうした認識がなければ、経営者としてあれほどの本気度は出なかっただろう」と言う。

 「日産も『日本の製造業』だから女性の比率はまだ改善の余地はあるし、役員会など意思決定の場にはもっと少ない。でも、自分たちの物作りや車の販売に女性の力を取り込まないと、ビジネスが財務的に健全化しないという考えをゴーンさんが明確にし、それを訴え続けてきたことは、今見ても先進的。他の企業にとって手本になるし、古くなっていない」。塚原さんは、そう指摘する。


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