政治

あの暴言議員だけでない…「政策秘書」はつらいよ!

読売新聞調査研究本部主任研究員 高橋徹
 「違うだろっ!」「おまえ、頭がおかしいよ」――。自民党の豊田真由子衆院議員による、政策秘書だった50歳代の男性に対する暴言・暴行問題が報じられ、豊田議員は党に離党届を提出する事態に追い込まれた。豊田氏の国会議員らしからぬ言動に驚いた人は多いだろう。公費で賄われる政策秘書は、本来、政策立案のスペシャリストとして、議員の法案づくりなどをサポートする任務を担う。しかし、実際は議員に“滅私奉公”を強いられるケースが珍しくないようだ。学生時代に議員事務所で秘書業務を経験した読売新聞調査研究本部の高橋徹主任研究員が、現職の政策秘書らの証言をもとに、政策秘書のあり方や課題を考える。

「実態はブラック企業の社員」とも

  • 2期目の当選を果たし、支持者から花束を受け取る豊田真由子議員(右)。仕事熱心な反面、事務所のスタッフには厳しかったという(2014年12月14日、埼玉県内の事務所で)
    2期目の当選を果たし、支持者から花束を受け取る豊田真由子議員(右)。仕事熱心な反面、事務所のスタッフには厳しかったという(2014年12月14日、埼玉県内の事務所で)

 「議員から『明日からもう来なくてもいいよ』と言われたら、それで解雇。政策秘書といっても身分保障はなく、失業保険もない。実に不安定な職業です」。自民党のある若手議員に仕える40代の政策秘書Aさんはため息をつく。

 国会議員の秘書がバッジを胸につけ、議員会館と国会内を奔走する姿は、国政の一翼を担う花形職業として国民の目に映る。

 衆参両院の議員は、3人(政策秘書、第一秘書、第二秘書)まで公費で秘書を雇うことができる。このうち、政策秘書は、第一、第二秘書より上位に位置づけられる存在だ。年齢やキャリアにもよるが、月額で43万3680円以上が支給される。住居手当や期末手当などを合わせると、年収ベースで1000万円を超えることも珍しくないという。しかし、勤務実態をみると、「ブラック企業の社員そのもの」(Aさん)という声が聞こえてくる。

 Aさんは、民間企業の勤務を経て、自民、民主両党の議員の秘書を20年以上経験してきた。

 政策秘書の一日は早朝からスタートする。国会開会中は、議員が出席できない党の勉強会をはしごして、必要に応じてリポートをまとめる。日中は支持者らの陳情を受け、他の秘書に指示を出す。議員が所属する院内の委員会で質問する原案作りなどが重なれば、帰宅は深夜になることが多い。

 「事務所では、『政策だけやっていればいい』という雰囲気は全くない。他の秘書との人間関係がギクシャクしないようにするため、合間に雑務もこなしている」とAさんは話す。

 土日もゆっくり休めない。選挙基盤が弱い若手議員は、次の選挙に備えて、週末ごとに地元選挙区に帰り、様々な会合に顔を出して、支持者との交流を深めようとする。この際、政策秘書が議員に同行するケースも多く、休暇が取れないことが常態化している。

 こうした勤務は、通常なら労働基準法違反になるところだ。しかし、秘書業務は、秘書を監督する地位にある議員の活動と一体不可分とみなされる職種に分類され、事実上、労基法の適用外となっている。

 議員事務所の勤務実態を、「ワンマン社長が率いる個人商店」になぞらえる向きもある。

 複数の議員事務所での勤務を経験したある女性政策秘書は、「ボス(議員)の政治思想や理念、人柄に共感していれば、何とか乗り切れる。でも、相性が悪かったり、人間的に尊敬できなかったりした場合は、事務所に行くのが本当に嫌になる」と顔をしかめる。

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