国際

「高官」不在…なり手がいない? トランプ外交

読売新聞調査研究本部主任研究員 大内佐紀
 「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領が就任して5か月。この間、北朝鮮情勢は緊迫の度合いを増し、中東の混迷は深まるなど世界情勢はめまぐるしく動いた。だが、トランプ政権下、外交を担う政府高官ポストの大半は空席のままだ。大統領は「議会で民主党が妨害するせいだ」と主張するが、指名そのものが滞っているのが実情だ。政権入りを辞退する人が相次いでいることも背景にうかがえる。高官の不在は、待ったなしの米外交にどのように影響しているのだろうか。読売新聞調査研究本部の大内佐紀主任研究員が読み解いた。

駐日米大使のいない独立記念日

  • 7月6日、都内の駐日米大使公邸で開かれた独立記念日の祝賀レセプションであいさつするハイランド首席公使(臨時代理大使)
    7月6日、都内の駐日米大使公邸で開かれた独立記念日の祝賀レセプションであいさつするハイランド首席公使(臨時代理大使)

 7月4日の独立記念日は米国にとって最も大事な祝日だ。首都ワシントンをはじめ全米各地で花火が上がり、市民らはバーベキュー・パーティーなどで独立を祝う。

 都内の駐日米大使公邸では、日程を少しずらした6日、241回目の独立記念日レセプションが開催された。ただ、主催したのは公邸の主ではなく、大使館ナンバー2のジェイソン・ハイランド首席公使だ。政権交代を受け、1月18日にキャロライン・ケネディ前大使が離任して以降、5か月以上、臨時代理大使を務めている。

 トランプ大統領は3月、政権移行チームで人事を統括していた南部テネシー州出身のビジネスマン、ウィリアム・ハガティ氏(57)を駐日大使に指名した。ハガティ氏はすでに上院の公聴会をクリアし、6月7日には上院外交委が賛成多数で了承、あとは上院本会議での正式承認を待つばかりだ。

 これまでの5か月間、駐日米大使の不在が日米関係に影を落とすことはあったのだろうか?

  • 駐日大使に指名されたハガティ氏(右から2人目、ロイター)
    駐日大使に指名されたハガティ氏(右から2人目、ロイター)

 「それはない」と複数の外務省幹部が口をそろえる。ある幹部は「安倍首相が、いち早くトランプ氏との間に個人的な信頼関係を築いたことが大きい。確かにケネディ氏は、オバマ前大統領との間にパイプがあった。だが今は、何かあれば首相本人が大統領に(じか)に電話ができる」と指摘する。両国間の重要懸案事項である通商問題でも、麻生財務相とペンス副大統領をトップとする日米経済対話の枠組みが始動している。

 米大使館当局者は「もちろん、大使が交代すれば大使の優先事項も変わる。ケネディ前大使は米国への日本人留学生を増やすことや草の根交流に熱心だった。新大使の下では、『通商、通商、通商』になるだろう」と予測する。

 幸いなことに、大使の不在が日米関係に悪影響をおよぼす事態とはなっていない。だが、ことは駐日大使に限った話ではない。各国大使をはじめ外交を担う政府高官ポストの大半は、いまだに空席のままだ。「人がいない」事態が米外交にとって好ましかろうはずはない。

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