国際

「高官」不在…なり手がいない? トランプ外交

読売新聞調査研究本部主任研究員 大内佐紀

駐韓大使もまだ…進まない指名

  • ホワイトハウスで、文在寅韓国大統領と夕食会に臨むトランプ米大統領。北朝鮮情勢が緊迫化する中、駐韓大使はまだ指名されていない(ロイター)
    ホワイトハウスで、文在寅韓国大統領と夕食会に臨むトランプ米大統領。北朝鮮情勢が緊迫化する中、駐韓大使はまだ指名されていない(ロイター)

 トランプ大統領の「政治任用(political appointee)」の状況をモニターしているワシントン・ポスト紙と民間活動団体の共同調査によると、7月11日現在、国務省の次官補(日本の局長級に相当)以上計31ポストのうち、26ポストが指名すらされていない。大統領の指名が正式に承認されたのは、ティラーソン長官と副長官2人の計3人だけ。議会承認を待っているのは、6ポストある次官の1人、22ポストある次官補の1人にすぎない。「未指名ポスト」の中には、政務担当や軍備管理・国際安全保障担当の次官、アジア太平洋や中東といった地域担当国務次官補が軒並み含まれる。

 大使ポストを見ても、指名が承認されたのは国連大使、駐イスラエル大使、駐中国大使など10人に満たない。北朝鮮情勢が緊迫化する中、駐韓大使はまだ指名すらされず、ペルシャ湾岸地域における一大同盟国たるサウジアラビアを担当する大使も同様だ。日本以外の主要7か国(G7)で見ても、フランス、ドイツが未指名で、英国とカナダ、イタリアは指名されたものの、公聴会の日程が決まっていない。

大統領指名ポストは4000超

 ここで米国の政治任用制度を改めて見てみよう。

 米国では建国来、新大統領が政府高官を自ら選ぶことが認められてきた。これが第7代大統領アンドリュー・ジャクソン(任期1829~37年)の時、大幅に増え、今では大統領が指名するポストは4000を超える。

 このうち約1000ポストについては、上院の外交委員会が公聴会を開いて候補者の資質を厳しく問う。委員会、本会議での各採決で過半数の賛成を得て承認されれば、正式に任用される。4000ポストというのは相当な数字で、政権交代のたび、ワシントンでは引っ越しラッシュが起きるといわれるゆえんだ。

 大使ポストは、選挙運動に貢献した人への“論功行賞”に使われる傾向がある。トランプ氏の場合、わかりやすいのはバチカン大使だろう。指名を受けたカリスタ・ギングリッチ氏は、トランプ陣営の幹部として選挙戦の勝利に貢献したニュート・ギングリッチ元下院議長の妻で、外交経験は皆無だ。

 政治任命の大使には、その国や地域を専門とする国務省の生え抜きがナンバー2の公使に就いてバックアップするのが慣例だ。例えば、ハガティ新駐日大使の着任を待つハイランド首席公使は、今回の赴任の前にも在日大使館、札幌、福岡の両総領事館で勤務した経験があり、夏目漱石を日本語で読む日本通だ。

  • キャンベル元国務次官補
    キャンベル元国務次官補

 国務省の高官は経験者から選ばれることが多い。日本でも知名度が高いカート・キャンベル元国務次官補(アジア太平洋担当)を例にとると、海軍勤務、国防次官補代理(日本でいえば審議官級)、シンクタンク勤務、国務次官補、コンサルタント会社社長といった経歴が並ぶ。キャンベル氏は民主党のヒラリー・クリントン候補の外交顧問だったので、仮にクリントン氏が大統領選で勝利していれば、今頃は重要外交ポストに就いていた可能性が高い。

 なお米国で、有力者が政府の要職と民間を行き来することは「回転ドア(revolving door)」と言われ、汚職や癒着の温床になりがちだとして批判されてきたことも指摘しておきたい。

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