国際

南シナ海、足場固める中国と危機感強める米国

防衛省防衛研究所主任研究官 飯田将史

ドゥテルテ大統領、したたかな面も

  • フィリピンのドゥテルテ大統領(AP)。就任後、南シナ海問題を巡る中国との緊張関係は緩和に向かった
    フィリピンのドゥテルテ大統領(AP)。就任後、南シナ海問題を巡る中国との緊張関係は緩和に向かった

――フィリピンでドゥテルテ氏が大統領になったことは、南シナ海問題にどんな影響を与えていると思いますか。

 ドゥテルテ氏が登場したことで、フィリピンの基本的な立場が変わったわけではありません。ドゥテルテ大統領が中国を訪問した際に出された共同声明を見ましたが、重要な点で全く譲歩していないのは明らかです。

 仲裁裁判の判決については、単にフィリピンが今すぐそれを持ち出して中国に抗議するわけではないというだけで、それ自体を放棄したわけではありません。見返りにフィリピンは中国からかなりの経済援助を得ました。

 決定的な譲歩をしていないにもかかわらず、経済的な支援を獲得し、中国との緊張関係を大きく緩和したというのは、かなりの成果だったと理解しています。

――その一方で、ドゥテルテ大統領は米国とも関係を強化しています。

 オバマ政権時代、ドゥテルテ大統領は非常に汚い言葉でオバマ大統領をののしりましたが、トランプ政権になってから、一度もそんなことはしていません。

 そもそも米軍のプレゼンス、米比同盟があるからこそ、ドゥテルテ大統領がこの1年でとってきた対中政策があるのです。背後に米国がいなかったら、ドゥテルテ政権がこれほど交渉力を持つこともなかったでしょう。

――中国とフィリピンの間で一番の焦点となるのは、スカボロー礁がどうなるかです。これが埋め立てられれば、米軍の行動にも大きな影響を与えます。現状はどうなっていますか。

 スカボロー礁は2012年の6月以降、中国がずっと政府公船を使って力で支配しています。フィリピン漁船は操業しようとしても、長らく追い払われてきました。

 報道によれば、ドゥテルテ大統領が16年10月に中国を訪問した後、中国はスカボロー礁周辺海域におけるフィリピン漁船の操業をあまり妨害しなくなりました。

 ただ、基本的に中国が実効支配している状況に変わりはありません。測量を始めたとの報道もありましたが、まだ、埋め立てなどの目に見える手段には出ていません。

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