国際

南シナ海、足場固める中国と危機感強める米国

防衛省防衛研究所主任研究官 飯田将史

中国はどう出るか

  • 中国の習近平国家主席(ロイター)。南シナ海問題で次にどう動くかが注目されている
    中国の習近平国家主席(ロイター)。南シナ海問題で次にどう動くかが注目されている

――中国では今秋、共産党大会が開かれます。こうした政治状況は中国の対外政策にどう影響すると考えますか。

 習近平国家主席は、昨年の第18期中央委員会第6回総会(6中総会)において、党の「核心」であるという立場を確立しました。党内における権力はかなりの程度、確立できていると思います。

 前回党大会の時は、習氏もライバルとの間で権力闘争があり、それが尖閣諸島問題に対する強硬姿勢につながったという分析もあります。ただ、その見方が正しかったとしても、習氏の体制はすでに固まっているので、現在の政治情勢がどこまで対外強硬姿勢につながるか、読めないところがあります。

――むしろ、リスクを避ける方向に動く可能性もあるわけですね。

 その可能性は十分にあると見ています。仲裁裁判の判決を受けて、中国は東南アジア諸国連合(AESAN)と行動規範の策定に向けた話し合いを始めましたし、フィリピンにドゥテルテ大統領が登場したことをチャンスととらえ、2国間協議もスタートさせました。

 習政権はこの1年、以前と同じペースで海洋進出は続けながら、同時に問題の沈静化を目指す動きも見せてきました。党大会を前に周辺環境の安定化を図るという流れになれば、同じような考えが南シナ海問題にも適用される可能性はあると思います。

――中国は13年に東シナ海で防空識別圏(ADIZ)の設定を発表しました。南シナ海でも同じようなことをするでしょうか。

  • インタビューに答える飯田将史さん(防衛研究所で)
    インタビューに答える飯田将史さん(防衛研究所で)

 中国は東シナ海で防空識別圏を宣言したのですから、南シナ海で宣言しない理由は見当たりません。スプラトリー諸島で埋め立てによって造った基地にレーダー、対空ミサイルなどを設置し、戦闘機を常駐させて防空能力を十分に高めれば、防空識別圏の設定が議題になるのは間違いないと思います。

 ただ、東シナ海の防空識別圏の設定は、国際的にかなり強い批判を浴びました。対外的に公表しなくても、自分たちで設定したラインに基づき、必要な時にスクランブル(緊急発進)をかければいいだけの話ですから、公表がプラスかマイナスかという点については十分議論するでしょう。

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プロフィル
飯田 将史(いいだ・まさふみ)
 防衛省防衛研究所地域研究部中国研究室主任研究官。専門は中国の外交・安全保障政策、東アジアの国際関係。1999年、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。スタンフォード大学東アジア研究センター客員研究員、米海軍大学中国海事研究所客員研究員などを歴任。主な著書に『海洋へ膨張する中国』(角川SSC新書)、『チャイナ・リスク』(共著、岩波書店)などがある。