文化

加藤一二三という生き方(下)77歳のアイドル

読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一
 将棋ファン以外の間では、加藤一二三九段という呼び方より、愛称の「ひふみん」の方がしっくりくるのかもしれない。テレビのバラエティー番組では、独特の早口でしゃべり続ける。盤上、盤外のエピソードには事欠かず、「ぶっ飛んだ」ことをしているのに、なぜか憎めない。そんな天然キャラで人気沸騰中だ。70歳を過ぎてからアイドルになった「ひふみん」の人気の秘密に迫った。

ひふみんワールド全開

  • テレビやイベントにひっぱりだこの加藤九段。最近は生歌を披露することも多い
    テレビやイベントにひっぱりだこの加藤九段。最近は生歌を披露することも多い

 ゲストの名前が発表されただけで会場が沸いた。ちょこちょこした足取りでステージに登場しただけで、「ひふみーん」「かわいい」の声が飛ぶ。

 今年5月、都内で開かれた映画の試写会に加藤九段がゲスト出演した時のことである。上機嫌のひふみんは「きよしこの夜」を伴奏なしで歌った。途中で高音が出なくなり、いきなりキーを下げて歌ったのはご愛嬌(あいきょう)。世界にひとつしかない歌い方で観客のハートをわしづかみにしてしまった。

 6月20日に現役を引退した加藤九段だが、むしろ、今の方が仕事に追われている。藤井聡太四段が新記録となる29連勝を達成した6月26日は、朝から深夜まで生出演だけで七つのテレビ番組をはしごした。

 盤上での体験を語り、信仰を語る。最近はそれに藤井将棋の解説も加わった。テレビやイベントへの出演、講演、執筆。仕事の依頼は引きも切らない。

 ひふみん人気に火がついたのは加藤九段が70歳を過ぎてからのことである。テレビの色々なバラエティー番組に起用されるようになり、そのはちゃめちゃぶりが広く知られるようになったからだ。

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