教育

フィンランドの教育改革・下 職業人を育てる

読売新聞論説委員 古沢由紀子
 北欧のフィンランドは、職業教育に力を入れていることでも知られる。一般の大学とは別に、専門大学(応用科学大学)があり、実務経験のある教員らに、職業と直結する知識や技術を学ぶ。小中学校の新カリキュラムも、起業家教育などに重点を置く。職業を意識することで学習意欲の向上につながるとして、日本でも注目されている。

「おもてなし」専門大学で学ぶ

  • 学生たちが製作した観光PR用のブース内。サンタクロースが住む北部の村とネットの電話や映像で交流できる(ヘルシンキのハーガ・ヘリア専門大学で)
    学生たちが製作した観光PR用のブース内。サンタクロースが住む北部の村とネットの電話や映像で交流できる(ヘルシンキのハーガ・ヘリア専門大学で)

 夏休みは目前だというのに、サンタクロースを思わせる衣装の女性たちに出迎えられた。ヘルシンキ市内のハーガ・ヘリア専門大学を訪ねた時のことだ。ホテルやレストランなどのサービス(ホスピタリティー)産業や旅行業の中核となる人材の育成に力を入れている。

 取材したのは学期の最終日で、学生たちが3か月かけて完成させた箱形のブースが、校内のホールに設置されていた。大手旅行会社の依頼で、「サンタクロースの村」として知られる北部ラップランド地方をPRするために工夫を凝らした。ブースに入ると、バーチャルリアリティー(仮想現実)のクリスマスを楽しめる。

 赤い帽子の女性たちは大学院生で、サンタクロースの助手「エルフ」をイメージしたそうだ。ブース内にはクリスマスソングが流れ、シナモンの利いた伝統的な飲み物が振る舞われる。目玉は、スクリーンに大きく映し出された「本場」のサンタクロースとの会話だ。ネット電話のスカイプを利用して、「この1年、いい子にしていたかな?」といった質問に答え、一緒に記念撮影もできる。

 「日本などアジアのショッピングモールにブースを設置して、フィンランドへの旅行気分を盛り上げたい。企業に企画を採用してもらえればいいのだが」と、ハーガ・ヘリア大の教員でサービス業関連の教育課程を統括するアリ・ビヨルクヴィストさんは話した。

 このプロジェクトに携わった大学院生の女性たちに話を聞くと、いずれも社会人経験者だった。ミンナ・ラミネンさん(47)は「最新のIT技術を使うのは未経験で、難しかった」と語る。20年余りレストランに勤務した後、「経営を学んでステップアップしたい」とハーガ・ヘリア大に入学し、現在は修士課程に在籍する。

 ニーナ・ジャーヴィネンさん(30)は、ハーガ・ヘリア大を卒業後、空港で働いていたが、本格的に旅行業に携わりたいと大学院進学のために戻ってきた。

 日本でも、2019年度から専門職大学が導入される。既存の専門学校などからの移行が見込まれるが、新たな進学先として、どこまで定着するかは未知数だ。フィンランドの専門大学は、実践的な職業教育を行う高等教育機関として世界的にも注目度が高い。

【あわせて読みたい】
・フィンランドの教育改革・中 いじめを「傍観」させない
・フィンランドの教育改革・上「教師にも『ゆとり』」
・部活の楽しみ方教えます…「ブラック部活」への処方箋
・早期スポーツエリート教育は「悪」か
・中学生ら4泊5日「スマホ断ち」合宿の成果は?