教育

フィンランドの教育改革・下 職業人を育てる

読売新聞論説委員 古沢由紀子

企業と密に連携

 ハーガ・ヘリア大ではこの日、スウェーデンやノルウェーの学生らも参加して、ベジタリアン向けの新メニューの開発を競うコンテストも開かれていた。国内の有名食品メーカーの主催で、1泊2日で10チームが知恵を絞るという。

 校内を案内してもらうと、廊下に並ぶ教室の入り口に、大手ホテルや菓子メーカーなどの企業名や商品のイラストが掲げられているのが目を引いた。各教室で行われる授業では、企業が講師を派遣し、実習課題を提供する。企業側には、優秀な学生の採用に結びつくというメリットもある。

  • ハーガ・ヘリア大に隣接する大手チェーンのホテルで実習する学生も。「大半の学生が週末は働いている」と話すビヨルクヴィストさん(ヘルシンキ市内で)
    ハーガ・ヘリア大に隣接する大手チェーンのホテルで実習する学生も。「大半の学生が週末は働いている」と話すビヨルクヴィストさん(ヘルシンキ市内で)

 さらにユニークなのは、校舎に直結する隣の建物が、大手チェーン、ベストウェスタン系列のホテルになっていることだ。学生の訓練のために開業したというが、一般のホテルとして運営され、多くの旅行客が利用する。フロントで忙しそうに働く従業員の中には、学生たちの姿もあった。

アルバイトも単位に換算

 専門大学は、職業実習を重視している。学生は、週末などにアルバイトをすれば実務経験として評価され、単位に換算される。もちろん、リポートを書くことなどが必要になる。

 フィンランドでは中学校までが義務教育で、16歳からは普通高校か職業学校に進む。高校の入試はなく、本人の希望や中学校の成績で進路が決まる仕組みだ。

 一般の国立大学は、学術研究に重点を置いている。専門大学は労働市場の需要に基づき、地域の発展に貢献する研究開発を目的としている。ビジネス以外にも、工学や社会福祉など様々な分野がある。普通高校だけでなく、職業学校からも進学しやすく、ハーガ・ヘリア大でも学生の半数近くが職業学校出身だ。働きながら大学に通い、3年半で卒業する。卒業後に実務経験を積み、7~8年後に大学院に進学する人も多い。

 フィンランドでは、大学院までの教育は無償だ。ハーガ・ヘリア大は私立だが、運営費の多くを公費でまかなう。計3か所のキャンパスがあり、IT、ジャーナリズムなども学べる。産業界や地域との柔軟な連携の在り方は、社会の変化に対応する上でも有効だろう。

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2017年8月8日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun