文化

映画『メアリと魔女の花』はニセモノなのか(前編)

スタジオポノック 西村義明
 アニメーション映画「メアリと魔女の花」が話題を集めています。スタジオジブリで2作の長編アニメ映画を手がけた米林宏昌監督の最新作で、多くのジブリスタッフが再結集しました。心温まるストーリー、手に汗握る展開、魅力的な人物造形と美しい背景画。作品自体はどこを取っても良質なジブリ映画の系譜に入る作品ですが、大きな問題があります。ジブリ映画を取材してきた記者が西村義明プロデューサーに疑問をぶつけました。

聞き手:読売新聞 原田康久

映画あらすじ
 赤い館村に引っ越してきたメアリ(声・杉咲花)は、森の中で青く輝く不思議な花を見つける。それはかつて、魔女の国から盗み出された禁断の花だった。花の力で不思議な力を手に入れたメアリは、ほうきに乗って雲間にそびえ立つ魔法世界の最高学府エンドア大学へとたどり着く。そして、大学への入学が許されるのだが、その時についたひとつの ( うそ ) が、大きな事件を引き起こしていく。

なぜジブリの名前ではないのか

  • 西村義明:スタジオポノック代表取締役プロデューサー。1977年、東京・大田区生まれ。米国留学後の2002年、スタジオジブリに入社し、『ハウルの動く城』『ゲド戦記』『崖の上のポニョ』の宣伝を担当。プロデュースを担当した『かぐや姫の物語』と『思い出のマーニー』は、いずれも米アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた。
    西村義明:スタジオポノック代表取締役プロデューサー。1977年、東京・大田区生まれ。米国留学後の2002年、スタジオジブリに入社し、『ハウルの動く城』『ゲド戦記』『崖の上のポニョ』の宣伝を担当。プロデュースを担当した『かぐや姫の物語』と『思い出のマーニー』は、いずれも米アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされた。

 ――映画を拝見しました。米林監督の3作品目ですが、率直に言って一番良いと思います。『思い出のマーニー』(14年)とは方向性が違いますが、米林監督はやはりジブリの伝統を引き継ぐ人だと思う。表現ひとつひとつ、世界観、すべてです。要するに良質なジブリ映画そのものだというふうに僕は感じたわけです。ところが、大きな問題がある。どうしてこれがジブリ映画ではないのか。ジブリの名前で出せなかったんですか?

 出せなかったでしょうね。

 ――もちろん、スタジオジブリは宮崎駿監督が引退宣言をして、制作部門を解散してしまったので、簡単にはいかないと思う。でも、目指すべきだったのではないですか。どうしてできなかったんですか?

 どうしてか? ジブリじゃないから、としか言えません。米林監督が『思い出のマーニー』を作り終えた後に、ジブリで彼の新作を作ろうという話はもちろんないし、それが答えですよね。ジブリという組織の答えです。もちろん宮崎監督が引退したのなら制作部門を解散するしかないという判断に、僕はすんなり納得しました。だから、米林監督が映画を作りたいという時に、新しい場所を用意せざるを得なかったですよね。

スタッフの8割がジブリ出身

  • (c)2017「メアリと魔女の花」製作委員会
    (c)2017「メアリと魔女の花」製作委員会

 ――でも、スタッフロールの名前を見ていても、『かぐや姫の物語』(高畑勲監督、2013年)『思い出のマーニー』をプロデュースしてきた西村さんご自身を含め、ジブリ作品を支えてきた人ばかりではないですか。実際、どのくらいのスタッフがジブリ出身者なんですか?

 終盤は作業工程によっていろんな方に関わってもらいましたけれど、やっぱり8割ぐらいはジブリ作品の経験者ですね。クリエイターなんかは、ほぼそうなっている。制作進行スタッフや間接部門も含めて、まあジブリですよね。別にカウントしたわけじゃないですけど、感覚的には8割くらいかな。

 ――やっぱり。

 メインスタッフは音響効果まで、ほぼジブリ作品経験者ということですね。

2017年8月7日12:25 Copyright © The Yomiuri Shimbun