社会

一瞬で沈む水難事故…救助は「浮いて待て」

水難学会会長 斎藤秀俊

離岸流より怖い「陸からの風」

 海の事故の原因で良く聞くのは「離岸流(りがんりゅう)」です。岸から沖に向かう海水の流れで、潮の満ち引きに関係なく発生します。巻き込まれれば水泳の得意な人でも流れに逆らって岸にたどり着くのは難しくなります。流れの幅は約10~30メートルなので、海岸と平行に泳ぐようにするのが脱出するための一般的な方法です。泳ぎに自信がなければ、100メートルも沖に出れば流れは収まるので、先ほど紹介した「背浮き」などで救助を待つ方法もあります。

  • 遊具のゴムボートに乗った子どものイラスト。上半身が“帆”の役割をして、陸からの風を受けてしまう
    遊具のゴムボートに乗った子どものイラスト。上半身が“帆”の役割をして、陸からの風を受けてしまう

 しかし離岸流よりも怖いのが陸側から吹いてくる風です。浮輪から上半身を出していたり、小さなゴムボートに乗っていたりする子どもが流されます。子どもの体が、ヨットでいう帆の役割をして、陸からの風を受けて沖まで流されるのです。秒速5メートルほどのそよ風でも、すぐに沖まで持っていかれてしまいます。離岸流とは違い、風は地形に関係なく吹くので危険な場所は多く、風が吹く限り沖に流され続けます。

 このケースで死亡事故に巻き込まれるのは、助けに行く大人であることが多いのです。子どもは流されても浮具があるので、浮かんでいれば救助されますが、親があわてて助けようと何の浮具も身につけず海に飛び込み、沖で深みにはまり溺れてしまうのです。慌てて海に飛び込まず、救助を要請するのが一番です。

 陸からの風は日本海側で多く見られます。夏場は南側の陸地から北側の海に向かって吹くからです。太平洋側では朝と夕方に陸から海に向かった風が吹くときがありますので、肌寒い風を感じたら海から上がったほうがよいでしょう。「遊び足りない」と、夕方遅くまで海に残っているのは危険です。

【あわせて読みたい】
・実は、交通事故より多い家庭内の死亡事故
・有毒「ヒアリ」、パニックを防ぐ三つのポイント
・身に覚えのない痴漢、世間の対処法は通用しない

2017年8月12日09:30 Copyright © The Yomiuri Shimbun