社会

一瞬で沈む水難事故…救助は「浮いて待て」

水難学会会長 斎藤秀俊

海は砂浜にも危険が

  • 上越市の事故現場で見られた「戻り流れ」。濃い白の三本の筋のように見える
    上越市の事故現場で見られた「戻り流れ」。濃い白の三本の筋のように見える

 砂浜にいても「戻り流れ」という強い波に引きずり込まれる危険があります。2014年5月に新潟県上越市の海岸で子ども3人を含む5人が亡くなった事故を私たちが調査した結果、「戻り流れ」を原因と推測しました。

 この場所は砂浜が幅約45メートルの間隔で、高くなったり、低くなったりを繰り返している地形でした。高低差は約1メートル。この事故では波が来ると砂浜に海水が流れ込む場所で遊んでいた子どもが被害に遭いました。海から岸に向かってくる波が崩れて砂浜に流れ込みます。この段階では波の高さはないので、溺れることがないように感じます。しかし、凹凸のある地形ですと、砂浜の高い場所に流れ込んだ海水が、戻るときには砂浜の低いところを通るので、砂浜の低いところでは海水の量が増し、強烈な「戻り流れ」が発生します。「戻り流れ」は水量が多く、力が強いので子どもが巻き込まれたら脱出できません。その速さは秒速5メートルから10メートルで、子どもがこの流れに乗ってしまうと、数秒で沖の深い場所まで流されます。上越市の事故では波が崩れる場所から約30メートル離れた砂浜にいた子どもが巻き込まれました。

川は急に深くなる

 川では誰もが注意する急な流れの場所よりも、流れの穏やかな場所で多くの事故が起きています。川底に足が着く場所でも、急に深くなる場合があり注意が必要です。橋脚や大きな岩の周辺では流れが変わり、川底が浸食されて深くなっていますので、特に危険です。

  • 大阪府茨木市の事故現場。真ん中に見えるのがコンクリートブロック
    大阪府茨木市の事故現場。真ん中に見えるのがコンクリートブロック

 2012年4月に大阪府茨木市の安威(あい)(がわ)で、中学生と助けようとした会社員が亡くなった事故は、周辺住民が「浅い川」と思っていた場所で発生しました。現場の川幅は約30メートル、コンクリートブロックで(せき)が築かれていました。調査してみると、確かに上流は浅いのですが、ブロックよりも下流は深く、2メートル以上のところもありました。亡くなった方はこうした深みにはまったと推測しています。

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2017年8月12日09:30 Copyright © The Yomiuri Shimbun