働く

指定席より自由席?オフィスで進むフリーアドレス化

ジャーナリスト 猪瀬 聖
 初めて訪れたオフィスでも、「誰に声を掛けたらよいか……」と迷うことはあまり多くない。席の並びで役職の見当をつけ、適当な相手を見つけることができるからだ。しかし、こんなやり方は通じない時代が近づいている。社員が座る席を固定せず、自由に選ばせる「フリーアドレス」のオフィスを導入する企業が急増しているのだ。無秩序にも見えるこの方法にどんな利点があるのか。働き方問題に詳しいジャーナリストの猪瀬聖さんが現場を取材した。

これがオフィス?ファミレス型の席も

  • フリーアドレスを導入した野村総合研究所のオフィス
    フリーアドレスを導入した野村総合研究所のオフィス

 社員に固定席をあてがわない「フリーアドレス」のオフィスを導入する企業が、大企業を中心に急速に増えている。狙いは、日本経済が成長を取り戻すための最大の課題でもあるホワイトカラーの生産性の向上だ。つまり、見かけ長時間働いても無駄が多く、大した利益を生み出せない日本人の働き方を是正するのに役立つ、というのだ。だが、座る場所を自由にしただけで生産性は本当に上がるのか。フリーアドレスの現場を訪ねた。

 新興オフィス街として開発の進む、横浜市のみなとみらい地区。今年6月、同地区に竣工した地上17階建ての大型オフィスビルに、野村総合研究所(NRI)の開発部門で働く約3000人が移ってきた。

 私が取材に訪れたのは8月下旬。案内されて執務フロアに入ると、従来の企業のオフィスとはまるで雰囲気が違っていた。

 例えば、仕事に不可欠な机は、(そで)(づくえ)がついたり、パーテーションで区切られたりした個人用のものは一つもなく、あるのは、会議で使うような縦長のテーブル型の共有机ばかり。一つの机に数人が向かい合って座り、パソコンの画面を見ながら黙々と仕事をしている。

 会社の机と言えば、「資料が山積み」「ごちゃごちゃして狭い」といったイメージを持つ人が多いかもしれないが、そんな光景は全く見られない。どの机も、清々(すがすが)しいほど物が置かれていない。人のいない席も多いため、オフィス全体がとてもすっきりして、広々とした印象を受ける。

  • ソックス型テーブル
    ソックス型テーブル
  • ファミレスブース
    ファミレスブース

 社員は朝、出社すると、カバン類を個人ロッカーにしまい、パソコンなどの仕事に最低限必要なものだけ持ち出して、自分の好きな席に座る。NRIの場合、部署ごとに大まかな場所の割り当てがあるが、そのエリア内なら、どこに座っても自由だという。退社時は、私物を片づけて帰るのがルールだ。

 フリーアドレスの特徴は、単に席が自由というだけではない。机の形も「フリー」で、様々なのだ。オーソドックスな長方形の机もあれば、従来のオフィスではまず見かけない、「く」の字に曲がった「ソックス型」と呼ばれる机もある。壁際に目をやると、ファミリーレストランなどの4人掛けテーブルのように椅子がソファになっている机もある。見た目そのままに「ファミレスブース」と呼ぶそうだ。机の天板が木目調だったり、椅子や壁の色がカラフルだったりと、デザインもおしゃれだ。 

 一見、気分よくリラックスして仕事ができそうな職場環境だが、これで、本当に生産性は上がるのだろうか。

【あわせて読みたい】
2050年、日本人の仕事はAIと中国に奪われるのか
中年『中だるみ社員』よ、やる気を取り戻せ!
働き方 日産「ゴーン改革」から学ぶべきポイント
なぜ会社の研修は役に立たないと言われるのか?