生活

身近な人を亡くしたら…【臨終から葬儀編】

読売新聞メディア局編集部 河合良昭

「近親者への連絡」が全てを決める

  • 父が書いた2冊のエンディングノート
    父が書いた2冊のエンディングノート

 残された家族の仕事は、まず、亡くなった事実を近親者などに知らせることから始まる。知らせた相手の多くは葬儀に参列する人になるため、この時点で葬儀の規模をどうするのかを決めていなければならない。母の今後の生活は父の残した預金と年金に頼ることになるため、葬儀を豪華にはできなかった。父が世話になった全ての人に知らせるのが理想なのだろうが、金銭的にも時間的に難しく、参列者の取捨選択を迫られたのである。

 父のノートにも「葬儀はできるだけ簡素に」と記され、呼ぶべき人があらかじめ絞り込んであった。「親戚」「得意先」「地元の人」「友人」などの項目に分かれ、名前と電話番号入りでリストになっていた。生前にそのリストを見せてもらったとき、私も名前を知っている人が入っていないかったので、理由を聞いたことがあった。交流が途絶えている、病気にかかっているなど、相手側にもそれぞれ事情があり、全ての方には声をかけづらいという事情を父は説明してくれた。

 最近、市販されているエンディングノートの中には、財産関係の項目が中心で葬儀に誰を呼ぶかのリストがないものや、葬儀の方法を「簡素に」などとのチェック項目から選ばせるだけで、具体的な手順に触れていないものがある。「友人一覧」を書くものもあるが、これだけではそれぞれの友人の事情や故人との交際の程度まではわからず、家族は葬儀に誰を呼んでいいのか迷ってしまう。市販のノートを選ぶ際は、「葬儀に呼ぶ人」がはっきりとわかるものにしたほうがよいと思う。

 知人には年賀状を頼りに調べたという人もいたが、やはり、故人との親密度がわからず、大変だったという。

死を伝えるだけで5時間

  • 父のエンディングノートには葬儀に呼ぶ人が明示されていた
    父のエンディングノートには葬儀に呼ぶ人が明示されていた

 リストを見て電話連絡することになるのだが、実はこれが大変だった。事の性質上、亡くなった事実と葬儀日程を事務的に伝えるというわけにはいかない。多くが母の知る人であり、面識のない私や姉が手分けして手伝えるものでもなかった。

 母は一人ひとりに電話をかけたが、亡くなった事実を伝えるだけで泣いて声が詰まってしまう。相手はそれを励ましてくれるので、しばらくして落ち着くが、そうなると故人の思い出話が始まる。1回の電話は30分を超えるようになり、これを何十回も繰り返すことになった。こうした電話の合間にも、葬儀の手配をしたり、お悔やみに訪れた近隣の人への対応などに追われたりしていたので、全ての連絡を終えるのに5時間近くかかった。父が亡くなったのは夕方だったが、連絡を終えた時は夜遅くなっていた。人数を絞り込んでいてもこれだけかかったので、増えれば、翌日にまたがることになるかもしれない。

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