経済

分裂、乱高下…ビットコインに何が起きているのか

ジャパンネット銀行CIO 出口剛也
 インターネット上の代表的な仮想通貨「ビットコイン(BTC)」が注目を集めている。紙幣や硬貨といった「実物」は存在せず、安い手数料で海外送金や決済ができるのが特徴だが、最近、このビットコインを管理するシステムが二つに分裂したほか、円やドルなど法定通貨に対する相場(価格)が乱高下して話題になった。ビットコインに今、何が起きているのか。ジャパンネット銀行執行役員最高情報責任者(CIO)の出口剛也さんに解説してもらった。(聞き手・メディア局編集部次長 中村宏之)

仮想通貨を進化させる「ゲーム」

――ビットコインをめぐる今回の分裂劇にはどういう意味があるのでしょうか?

 まず、仮想通貨の一般的な仕組みを説明しましょう。世界中のコンピューターで処理可能なデータ形式(ブロックチェーン技術=電子台帳システム)とその処理手順(プロトコル)を定めて、価値の保存や伝達を行います。ビットコインの場合も、これらの共通ルールを順守したプログラムが世界中のコンピューターで稼働することで、各国の法定通貨との交換取引や送金取引を実現させています。

 日本では今年4月に、改正資金決済法(仮想通貨法)が施行されたことや、7月からは購入(円との交換)時に消費税がかからなくなったことなどもあり、利用者が急増しました。取引量も急伸し、送金処理などの能力に低下が見られたことから、上記の共通ルールを改善し、コンピューター処理性能を向上させる検討が始まっていました。

 円などの法定通貨を用いた送金や外国為替の場合は、受け払いを行う口座を保有する各銀行のコンピューターシステムや銀行間決済を担う決済機関(全国銀行協会が運営する全銀ネットや国際銀行間通信協会が運営するSWIFT(スイフト))のインフラを取引量の増加に応じて計画的に増強することで、処理能力の低下を未然に防止しています。

 一方、ビットコインのような仮想通貨の場合は、こうした銀行間のシステムを介さずに、インターネットを通じて直接個人や企業間で取引や送金を行っています。安い手数料で海外送金などができるメリットがある反面、決済システム全体の開発・運用については、そこに参加する開発者や取引承認を行っている運用者(マイナー=採掘者の意味)が集まって合議的に対策を検討する必要があるのです。

 紙幣などの「実物」が存在しない仮想通貨が正確かつ安全に維持運用されているのは、取引を承認して、その履歴を電子的な台帳に記録する役割を担うマイナーが複数存在しているからですが、ここに共通ルールとしてゲーム的な要素が盛り込まれています。「最もスピーディーに取引承認を行ったマイナーに成功報酬が支払われる」というルールです。各マイナーはコストをかけてコンピューターの処理能力を高め、成功報酬の獲得を狙うのですが、その際、自らに有利となるように自分のコンピュータ処理に最適なデータ形式や処理手順(の共通ルール化)を要求するのです。こうして、ビットコインの開発者や運用者たちという利害関係者たちが議論したわけですが、その結果、統一したルールでは合意できず、二つの異なるルールが生まれてしまったのです。

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