社会

なぜ「やばいこと」はうまく伝えられないのか?

リスクコミュニケーション・コンサルタント 西澤真理子
 職場、学校、家庭などで「これはちょっと言いだしにくい」と困っていることはないだろうか。不祥事、不満、異見……、口に出せばトラブルを招きかねない。かといって、言わなければ、いつかもっと大きな問題になるかもしれない。相手の気分を害するようなネガティブな情報は、どう伝えればいいのか。リスクコミュニケーションに詳しい、コンサルタントの西澤真理子氏に解説してもらった。

「分かってくれるはず」は通用しない

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 「ちょっと言いにくいなあ。どうやって伝えればいいだろう……」

 ビジネスの場、夫婦間、近所づきあいなど日常のあらゆる場面で、誰でもこんなふうに悩んだことがあるのではないでしょうか。ミスや不祥事などのネガティブな事実は、伝えにくいものです。

 「相手もきっと自分と同じように考えてくれるはずだ」

 「以前ミスしたときもそうだったが、謝れば許してもらえるに違いない」

 相手が聞きたくないであろう「やばいこと」を伝えるとき、こんなふうに、「勘」や「場数」に頼ってしまっていないでしょうか。

 確かに、社内には「忖度(そんたく)」や「暗黙の了解」のような、「組織の常識」があると思います。友人同士や夫婦なら、「阿吽(あうん)の呼吸」で理解できると信じているかもしれません。だから、「きっと分かってくれるはず」と考えるのは、ある意味当然でしょう。

 しかし、これは自分に都合がいいだけの、非合理的な思考です。具体的な根拠がないからです。なぜ、私たちは「〇〇のはず」と勘違いしてしまうのでしょうか?

 2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者のダニエル・カーネマン氏は、人は短時間で満足のいく判断を行う簡便な思考方法を使うと説明しています。

 つまり、自分の信じたい、都合のよい情報だけを集め、正しいと思い込み、都合の悪い情報を無視します。それが積もり積もって、「わが社の常識、世間の非常識」になっていくのです。

 伝えるべき不都合な事実は、こうした思考回路のもと、うまく伝えられず、誤解やトラブルの火種となります。

 では、具体的に「やばいこと」を伝え損ねてしまうパターンを紹介しましょう。

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