社会

やせすぎモデルが禁止されるワケ

政策研究大学院大学教授 鈴木真理
 グッチやルイ・ヴィトンなどの有名ファッションブランドの運営会社がこの秋、相次いで「やせすぎたモデルを起用しない」とする声明を出した。モデルたちの健康が問題となったためだ。日本では「やせていることは美しい」という風潮がまだ一部にあり、医師たちは思春期の女の子の不要なダイエットにつながりかねないと懸念し、「やせすぎモデル禁止法」を制定すべきとの議論も始めた。思春期に栄養バランスを損なう危険性などについて、医師で政策研究大学院大学教授の鈴木真理さんに解説してもらった。

海外はやせすぎモデルを規制

  • 写真はイメージです
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 1970年頃から、世界的にファッション誌などのメディアが「やせていることは美しい」などとして、ダイエットを特集するようになり、購読数を伸ばした。小さいサイズしか作らないアパレルブランドも希少価値が認められ、人気が出た。すると欧米で拒食症(学術名:神経性やせ症)患者が増加し始めた。

 そんな中、ファッション誌「ヴォーグ」のオーストラリア版の元編集者が記した「ヴォーグの真実(The Vogue Factor)」が出版され、モデルが洋服のサイズに合わせるためにダイエットを要求され、拒食症になる過酷な環境が明らかにされると、流れが変わり始めた。

 アメリカの10代向けのファッション誌「セブンティーン」は、「写真加工による非現実的な体形は思春期女性の美意識へ悪影響を及ぼす」という署名を受けて、「健康なモデルを使い、写真加工をしないで掲載する」ことを宣言した。

 2012年には、ヴォーグ誌の19か国の編集長が連名で「ザ・ヘルス・イニシアティブ」を出し、やせすぎのモデルを採用しないことを決めた。21歳のブラジル人モデルが拒食症で死亡したことを受けての動きだった。

 4万人の拒食症患者がいると言われるフランスでは16年、モデルの活動に、健康な体重、体格であることを示す医師の診断書の提出を義務付け、違反したモデル事務所に禁錮刑や罰金を科す法律が公布された。スペインのマドリードのコレクションでは、BMI(身長と体重の比率から算出する体格指数)が18を下回るやせすぎモデルのショーへの出演が禁止された。

 グッチやルイ・ヴィトンなどの有名ファッションブランドの運営会社の決定も、ファッション業界が、若い女性に多大な影響力を持つという責任を認識してほしいという社会の声に答える姿勢を見せたといえる。

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2017年11月15日15:00 Copyright © The Yomiuri Shimbun