社会

介護の現場、「死の準備教育」を忘れてはいないか

介護ジャーナリスト 小山朝子
 東京都中野区の介護付き有料老人ホームで83歳の男性入居者が殺害され、25歳の元職員が殺人容疑で逮捕された。元職員は何度も布団を汚されたことに腹を立て、犯行に及んだという。近年、職員が高齢者を虐待し、重大な結果を招く事件が後を絶たない。事件を防ぐには職員の教育が何より大切になるが、その際、忘れてはならないことがあるという。介護ジャーナリストの小山朝子さんに寄稿してもらった。

布団を汚されたことに立腹

  • 事件の現場となった東京都中野区の介護付き有料老人ホーム「ニチイホーム鷺ノ宮」
    事件の現場となった東京都中野区の介護付き有料老人ホーム「ニチイホーム鷺ノ宮」

 尊い命を預かる現場でまたも悲劇が起きた。

 事件の現場となったのは、東京都中野区白鷺にある介護付き有料老人ホーム「ニチイホーム鷺ノ宮」。殺人容疑で逮捕された元職員は、この老人ホームに勤務していた。2017年8月、被害者の男性入居者を浴槽で窒息死させた疑いが持たれている。

 介護付き有料老人ホームというのは、利用者が必要な時に、施設の職員による介護サービスを受けられる施設である。

 事件が起きた施設を運営するのは、ニチイ学館の100%子会社である「ニチイケアパレス」だ。同社は、東京、神奈川、埼玉、千葉など首都圏を中心に、介護付き有料老人ホーム「ニチイホーム」を70施設以上、展開している。母体であるニチイ学館は東証一部上場企業で、医療・介護・教育などの事業を柱としており、介護業界では最大手である。

 ちなみに、「ニチイホーム鷺ノ宮」の入居費用には、(1)最も低額な居室で980万円(非課税)の入居金プラス月額利用料22万6800円を払う「入居金プラン」、(2)入居金が0円で月額利用料が43万800円の「月払いプラン」の2種類があり、利用者は(1)か(2)のいずれかのタイプを選択して支払う。 

 ニチイホームのホームページでは、サービスの特徴として以下のように書かれている。

 <働くスタッフや施設が「安心・安全」を心がけることが、すべての基本です。ニチイホームでは、介護の質にこだわり、経験・技能・知識の全てを修得した「プラチナ介護職」になることを、全スタッフの共通目標として推進することで、日々進化していくサービスを提供しています>

 犠牲となった男性利用者やその家族がこの説明文を読み、数ある施設から同施設を選んでいたのだとしたら、あまりにむごい仕打ちではないか。

 逮捕された元職員は、夜勤中に男性入居者が何度も布団などを汚したことに立腹し、部屋でその男性の首を絞めたうえで浴室に連れていき、浴槽に投げ入れて湯をため、殺害したとみられる。警察の調べに対して、殺害を認めた上で「何度も粗相されて立腹し、『いいかげんにしろ』という気持ちになった」という旨の供述をしているようだ。

 事件発生当時、駆けつけた警察官に対して、元職員は「ナースコールが鳴ったので対応に追われ、戻ってきたら風呂で(おぼ)れていた」などと説明していた。

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2017年11月25日05:20 Copyright © The Yomiuri Shimbun